2009年7月17日(金)「しんぶん赤旗」
自治体保育行政 アンケート調査
一般財源化で弊害8割
自治労連自治政策局長 木村雅英さんに聞く
国庫補助金と地方交付税の削減、税源移譲の「三位一体の改革」(2003〜06年度)による公立保育所の運営費、施設整備費の一般財源化で、市町村の保育事業にどんな影響がうまれているのか、自治労連(日本自治体労働組合総連合)と保育研究所が合同で自治体へのアンケート調査をしました。495市区町村の保育行政担当者から回答がありました。自治労連の木村雅英自治政策局長に、調査結果からわかったことを聞きました。(川田博子)
政府は、一般財源化によって、地方自治体の自律性を高め、特徴を生かした保育行政を推進できると説明してきましたが、保育行政の現場での受け止め方はまったく逆です。
一般財源化による影響では、「保育材料や備品購入費の削減」(23・2%)や「職員の新規採用を抑制」(17・2%)、「公立保育所の廃止・民営化」(11・4%)など、否定的影響が表れたとする回答があわせて約8割にのぼりました。一方、政府がいうような「自治体の自由裁量の拡大によって保育行政が充実された」との回答は、あわせて8・8%にすぎません。
今後の公立保育所運営費のあり方についての回答では、「国庫負担金制度に戻すべきである」(45・6%)と「交付金制度に改めるべきである」(5・8%)をあわせて半数を超えています。一方、一般財源化の維持を求めた回答は17・3%でした。市区町村の保育行政担当者は、公立保育所の財源を、一般財源ではなく、目的がはっきりしている国庫補助負担金に戻すことが望ましいと考えていることがわかりました。
本来、保育の財源は、憲法25条の国の生存権保障義務にもとづき、国が責任をもつべきです。私たちは、どんな地域でも等しく子どもたちのための保育が保障される、そのための財源を要望してきましたが、その重要性が浮き彫りになりました。
「コスト削減」
調査では、公立保育所の廃止・民営化の理由が、保育所の役割充実ではなく、コスト削減であることも明らかになりました。
公立保育所の今後の役割をたずねると、約9割の市区町村が「子育て支援の拠点」、約8割が「養育困難なケースを引き受けている」と考えており、働いている人だけでなく専業主婦への育児支援の役割としても高く評価しています。いままで民営化等を進めてきた市区町村も、公立保育所の役割を否定しているのではなく、「重要だが、数は今より少なくてよい」「コストがかかる」など、役割とは別の理由で、民営化を進めているのです。
調査では、財政力がある大規模自治体ほど、民営化をすすめ、財政力の弱い小さい自治体ほど民営化、廃園どちらもしていないこともわかりました。財政状況が厳しいからではなく、コスト削減をしたいから民営化を進めているのです。ここに、公立保育所を守りたい保護者・住民の意識との開きがあり、税金の使い方が問われています。
非正規4割超
保育所保育士における非正規雇用の増大がいわれていますが、公立保育所で通常保育に従事する非正規職員の比率が42・5%、朝夕の延長保育では49・5%に上ることが明らかになりました。臨時・アルバイトの3分の2がクラス担任をもち、正規職員と同様に保育の計画をつくって実施し、保護者との対応なども担っています。ところが、臨時・アルバイトのうち、昇給経験加算があるのは18・1%にすぎません。専門性・継続性が求められる保育の業務でありながら、処遇面で経験が考慮されていないことが明らかになりました。
若い世代の雇用破壊が進む一方、職を求める女性が増え、保育要求は切実になっています。待機児童の解消は待ったなしです。児童福祉法24条にもとづく現行保育制度を生かして、保育が必要な子どもと保護者に責任を持てるよう、「保育所つくれ」「保育料を安くして」の運動を住民とともに進めていきます。