2009年7月16日(木)「しんぶん赤旗」
主張
グアム「移転費」
基地の痛み大きくする税負担
日米両政府は、米軍グアム基地建設のために、日本が2009年度分として3億3600万ドル(予算上約346億円)を米国に提供する、交換公文を結びました。
在沖縄米海兵隊の移転を名目にした、日米グアム「移転」協定にもとづく初の資金供与です。駐日米国大使館は「米軍再編計画の実施に向けた重要な第一歩」と表明しています。国民生活予算を削りながら、米軍にはいわれのない資金まで供与することに批判が噴出しています。政府・自公の責任が改めて問われます。
世界に例のない異常
グアム「移転」協定は、無償の財政支出28億ドルと返済が前提の出資・融資32・9億ドルの合計60・9億ドル(約6270億円)の負担を日本に義務付けています。今回の無償提供は、28億ドルを上限とする財政支出の始まりにすぎません。今後米軍再編完了の期限である2014年まで毎年、米軍の注文に応じて巨額の資金を米側に無償供与することになります。
外国の軍事基地建設のための費用を負担する国は、日本政府が認めているように、どこにもありません。主権国家なら当たり前の原則です。事実上の主権放棄なのに、痛みさえ感じない日本政府の態度は、まさに世界の異常です。
グアム基地建設は米軍の世界戦略のためです。「日本防衛」とは無縁で日米安保条約にも根拠がありません。沖縄県民の痛みを「軽減」するためという口実をもちだしても、不当なグアム基地建設経費の日本負担を正当化することなどできるはずがありません。
協定は沖縄からグアムに移る海兵隊員の数を8千人としていますが、政府は国会答弁で海兵隊員1万人を沖縄に残すことが目標だといっています。現在のように1万3千人程度の駐留なら移転数は3千人ということになります。これは完全にペテンです。グアム「移転」協定の前提が崩れた以上、経費負担はやめるべきです。
しかも、実際には沖縄からグアムに海兵隊司令部要員を「移転」しても沖縄県民の痛みは、なくなりません。1万人をこえる海兵隊戦闘部隊が残るからです。米兵の犯罪は続き、戦闘ヘリや輸送ヘリなどの訓練で耐え難い爆音や墜落の危険を強いられ続けます。
そのうえグアム「移転」とひきかえに沖縄県民に強いる新基地建設が、県民に新たな「痛み」を与えます。沖縄中部の辺野古沖の新基地から米軍機が周辺住民の頭上を訓練飛行することも政府説明で明らかです。垂直離着陸もできる最新鋭輸送機オスプレイの配備で、住民の「痛み」がさらに増大するのは避けられません。
グアム「移転」協定は、「移転」が新基地計画の「進展にかかっている」とのべています。「移転」は新基地建設が条件だというのです。県民に痛みを強いるために、税金を投入することに、県民が反対するのは当然です。
軍事費を大幅に削減せよ
グアム基地建設を含め米軍再編予算は3兆円かかると米政府・軍の幹部が明言しています。日本政府は予算の「別枠」扱いにしてでも、再編経費を保障する構えです。国民を苦しめながら、米軍を思いやる政府の態度は本末転倒です。
国民生活を守るためにも、米軍再編予算をやめ、軍事費の大幅削減を求めることが重要です。
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