2009年7月11日(土)「しんぶん赤旗」
中国 新疆ウイグル騒乱
少数民族に優遇策とるが
漢民族との格差は拡大
【北京=山田俊英】新疆(しんきょう)ウイグル自治区の騒乱は、世界最大の多民族国家である中国の困難を改めて浮き彫りにしました。
政府は少数民族に対して優遇政策を実施していますが、急速な経済成長の中で広がる格差に追い付きません。他方、多数民族である漢族の間では、今度の事件で「少数民族を優遇しているのに」との声が聞かれます。
中国で国が認めた少数民族は55。居住区域ごとに自治区、自治州などを定めています。大学入学にあたって特別枠を設けたり、「一人っ子」政策の例外として各家庭2人の子を認めるなどの優遇策があります。
しかし、優遇策はすべての少数民族で同じではなく、記者(山田)が出会ったモンゴル族の女性は「『一人っ子』の緩和策は今はない」といいます。
自治地域では慣例として大抵、少数民族が自治区主席や市長など地方政府の長、漢族が共産党の責任者を務めています。地方政府の長は行政、共産党の責任者は党務という分担ですが、憲法で指導政党と定められた共産党が、行政にも強い権限を発揮します。
新疆の少数民族は46。自治区政府の統計によると、全人口に占める少数民族の割合は1978年58%、2007年60%とほとんど変わりません。
ただ、経済成長の中で他の地方から一時的に移住して働く人は統計に含まれず、漢族住民の数は統計より多いとみられます。
新疆は観光地として売り出しており、外国人旅行者の通訳、サービス業の管理職などには、他の地方から単身赴任して一年の大半を新疆で生活する漢族が多く、そのもとで働く地元の少数民族が増えています。
国家統計局によると、住民1人当たりの域内総生産(GDP)で新疆は全国31の省級行政区中14位ですが、可処分所得は28位と低く、消費支出で見た都市と農村の格差は3・9倍と全国4番目の大きさです(いずれも2007年時点)。