2009年7月11日(土)「しんぶん赤旗」
主張
財界の「注文」
迎合する政党に願い託せない
日本経団連が自民・民主両党に「(総選挙の)政権公約に盛り込むべき優先事項」を突きつけています。「優先事項」は「消費税を含む税制抜本改革」や「憲法改正」など10項目にわたります。政権公約に掲げるだけでなく、それぞれの項目を実行するための計画を明記するよう迫っています。
日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は「注文」を発表した6日の記者会見で、「具体的な措置をぜひとも盛り込んでほしい」と念を押しました。
大企業減税と庶民増税
日本経団連が自民・民主に注文をつけるのは、もはや“年中行事”となっています。しかし、選挙直前に具体的に公約に盛り込むよう求めたのは初めてです。
10項目の内容は1月に経団連が発表した「2009年優先政策事項」を踏襲しています。経団連は04年から献金のあっせんを再開しました。以来毎年、自民・民主の政策と実績に対して「優先政策事項」の項目ごとに5段階評価の通信簿を付けています。要するに企業献金の「査定」です。
今回の要求が、自民・民主に対する財界の献金「査定」の一環であることは明らかです。
「消費税を含む税制抜本改革」で経団連が要求しているのは、法人実効税率の10%引き下げと、財政再建や社会保障の財源を口実にした消費税増税です。
財界の代表が巨額の献金を振りかざして、大企業向けの大幅減税と国民の暮らしを痛めつける消費税増税を公約に入れるよう求める―。あまりにも身勝手であり、露骨です。自民党も民主党も、それほど財界から甘く見られているということにほかなりません。
自民・民主両党は、幹部が献金「査定」の面接(政策を語る会)にはせ参じ、どれだけ財界の要求に応えたかのリポートまで提出して忠誠を競ってきました。
今年の面接で民主党は、消費税増税は「段階を踏んで実行」し、法人実効税率は引き下げる方針だと答えています。民主党は企業献金の「3年後禁止」を掲げていますが、面接では「3年間は引き続きご支援を」と泣きついています。この体たらくでは財界から甘く見られるのも当然です。
何より、「財源は消費税しかない」とする議論の発信源は財界です。消費税は力の強い大企業なら価格にすべて転嫁できる税金であり、一円も負担しなくて済む税金です。輸出品は消費税を免除され、輸出大企業には巨額の「戻し税」さえ返ってきます。大企業、特にトヨタやキヤノンなど輸出大企業には、これほど有利な税制はありません。
日本の大企業の税と社会保険料の負担水準はドイツの8割、フランスの7割にとどまっています。「消費税しかない」という議論は大企業の公的負担の責任から目をそらさせると同時に、ますます負担を軽くする財界奉仕の「隠れみの」になっています。
消費税に頼らなくても
財界とのしがらみのない立場で財政を見れば、消費税に頼る必要はありません。5兆円の軍事費、年間7兆円の行き過ぎた大企業・大資産家減税にメスを入れれば、社会保障の財源は生み出せます。
企業献金を拒否して大企業にはっきりモノが言える日本共産党こそ、消費税に頼らず、暮らしの願いを実現できる政党です。