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2009年7月6日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

市民メディアって知ってる?

自分たちが情報発信


 「伝えたいことやマスコミがなかなか伝えないことを、自分の手で発信していこう」―。既存のメディアから情報を受け取るだけでは、満足できない。自分たちがつくり手となって情報を発信しようと動いている人たちがいます。(岩井亜紀)


 東京都新宿区の学生街から一歩奥の路地を入った、閑静な住宅街のマンションの一室。ビデオカメラを片手に10人余りの人たちが集まりました。NPO法人・市民メディアセンターMediR(メディアール)が主催する初級ビデオ講座。撮影・編集の基礎を学びます。

 引きこもりがちな20代の女性、定年退職した男性、マスコミの報道に疑問を感じている女性などが集まりました。

 この日は実際に撮影してみました。MediRの紹介ビデオをつくろうと、マンションの入り口や玄関、教室全体や機材など、思い思いに撮っていきます。さらに、スタッフのインタビューを1人ずつ撮りました。

 講師は、個々人が情報の送り手となる市民メディアの可能性について「ビデオの技術が発展し、インターネットで世界中とつながっている今、市民運動など報道されないものを自分でつくって伝えることができるようになりました」と解説しました。

メディアの限界

 MediRは08年6月、弁護士や社会運動に参加した人たちが立ち上げました。非営利の市民団体として、市民一人ひとりが情報を受け取り、発信する能力を高めることを通じて豊かな市民社会の実現をめざしています。メディアに関する講座や研究、政策提言をやろうと活動しています。

 MediRのスタッフ米田麻衣さん(24)は、大学院で平和学を専攻しています。

 ドキュメンタリーをつくる会社でアルバイトをしたとき、マスメディアの限界を感じました。「プロでなくても情報を発信できる時代。問題だと思うことを伝えないと、知らない人は知らないままになってしまう」と言います。

つくってしまえ

 受講者の一人で、派遣社員としてコンピューター関連の仕事をしている白銀(しろがね)由布子さん(36)は、2年前までドキュメンタリー番組制作の事務作業をしていました。今後、映像制作にかかわるとき、ノウハウをわかった上で仕事したいと考えています。

 白銀さんは「ひとりよがりな内容では、つくってもつまらない。対話になるようなものをつくりたい」と話します。

 大阪出身の森美也子さん(38)=仮名=は、ドキュメンタリー映像を撮りたいと受講。大阪で、映画祭の企画をやっていました。これまでは、東京でつくられた映画を大阪で上映。もっと独自性を出したいと、大阪でつくられたものを探しましたが、見つかりません。「それならつくってしまえ。今度は自分でつくって発信したい」と、受講の動機を話しました。

弱者の声や運動伝え

 NPO法人・市民メディアセンターMediR(メディアール)のスタッフ松浦敏尚さん(31)に、MediRがめざすもの、メディアとの付き合い方について聞きました。

*  *  *

 韓国には、活発な活動をしている市民メディアセンターが数多くあります。それらは市民や社会的弱者、社会活動家などの情報発信を支える役割を果たしています。

 韓国のメディアセンターの活動をヒントに、市民メディアセンターMediRを立ち上げました。私は、MediRのさまざまな役割の中でもとくに、マスメディアには取り上げられないような社会運動の情報発信支援を重視しています。映像とインターネット、ラジオなどを柱に、発信力を強めていきたい。

 社会運動は、生活や労働の実態と結びついています。多くのそういった声が集まれば、それぞれの置かれている社会的状況やその奥底にある社会の本質が見えてくるのではないか。

 まずは、自分の声を発信してみてほしい。映像、写真、文章、歌なんでもいい。発信することで、それに気づくことができる人、共感できる人にメッセージを届けられます。それは、新しい連帯の可能性をひろげます。

 さらに、私たちの周りにあふれているさまざまな情報に触れることによって、自分の狭い価値観や世界から抜け出せる手だてがみつけられ、より客観的な目を持つことができるようになると思います。


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