2009年7月5日(日)「しんぶん赤旗」
マスメディア時評
選択ゆがめる誤報は許されない
東京都議会議員の選挙が告示されました。都民の暮らしがかかった大事な選挙です。
ところが、マスメディアの報道や論評には、「政権直結」(「朝日」)、「政権選択占う」(「東京」)といった、まるで国政選挙のように扱う報道が目立ちます。都議選がどんなに大きな影響を持っていても、都政抜きでもっぱら国政との関連から論じるのでは、都民の暮らしと福祉に直接かかわる都議選の意義を台無しにするものです。
民主=野党は事実に反する
なかでも見過ごせないのは、国政での「政権交代」に絡めて、都議会で明白な与党である民主党を「野党」として扱う報道が繰り返されていることです。これは明らかな誤報です。
この4年間、知事が提案した1149件の案件に対し、自民党、公明党は100%、民主党も99・3%に賛成しています。石原知事に「同憂の士」と認められる都議会民主党の元幹部もいます。民主党がにわかに「野党ポーズ」を示しているのは、政党として不誠実このうえないものです。
新聞やテレビなどマスメディアが、こうした事実を無視し、自民と民主のどちらが第1党になるかなどと報道するのは、都民の選択を妨げるものでしかありません。とりわけ現在の都政に批判的な都民にとって、どの党が与党か野党かは重大問題です。都議会で自公民「オール与党」に対決している野党は、日本共産党だけです。マスメディアは直ちに誤った報道を正すべきです。
マスメディアの報道や論評の中でも、新聞社を代表する「社論」といわれる社説で、こうした誤報が堂々とまかり通っているのは重大です。
「社論」の名がこれでは泣く
「毎日」は4日付の「都議選スタート 問われるのは『政権』だ」という社説で「都議会は与野党の対決図式が国政とほぼ同じだ」と書き、自公が過半数を維持できるか、民主が第1党を奪取するのかと論じています。「日経」も3日付で、「都議会は国政と同様に自民と公明が与党」と書いています。「東京」も同日付で、「政権選択占う首都決戦」と書きました。
誤報を前提にした議論は空論というほかなく、これでは「社論」の名が泣くといわなければなりません。
「正確」で「公正」な報道を求めた新聞倫理綱領を引くまでもなく、有権者に事実を正しく伝え、国民が主権者として権利を正しく行使できるようにすることは、民主主義社会を支えるマスメディアとしての責任のはずです。とりわけ社説には重い責任があります。 (宮坂一男)