2009年7月2日(木)「しんぶん赤旗」

主張

概算要求基準

こんな置き土産はいらない


 麻生内閣が2010年度予算の概算要求基準(シーリング)を閣議で了解しました。

 焦点の社会保障費では、毎年シーリングに明記してきた2200億円の削減方針を掲げませんでした。与謝野馨財務相は「来年度は」削減しないとのべています。

暮らしに打撃続く

 小泉内閣以来の社会保障の抑制路線で自公政府が削った予算は、02〜08年度の7年間に1・6兆円を超えています。自公政府は、それだけの社会保障の改悪を強行し、医療や介護、生活保護など社会保障のあらゆる分野で負担増・給付カットを進めてきました。

 「来年度は削減しない」という方針は、新たな制度改悪を一休みするということでしかありません。生活保護の母子加算や老齢加算の廃止をはじめ、これまでの制度改悪を改めない限り、これからも国民生活への打撃が続きます。

 政府はシーリングにも今年の「骨太方針」にも、抑制路線のレールを敷いた「骨太方針2006」を「踏まえ」「歳出改革を継続」すると明記しています。社会保障の抑制路線の誤りを認めず、選挙目当てで国民の目をごまかすやり方にほかなりません。

 自公政府は11年度からの消費税増税で財政の帳尻を合わせようとしています。経済対策の大盤振る舞いとばらまきの赤字とともに、社会保障の削減の“凍結”分は、低所得者ほど負担が重い消費税の増税で取り戻すたくらみです。

 不要不急のむだな予算の筆頭は軍事費ですが、シーリングでは1%の削減にとどめています。政府はグアムの米軍基地の建設など米軍再編でアメリカと協定を結んで経費を聖域扱いにし、海外派兵や北朝鮮の核実験を口実に軍事費増額に転じようとしています。

 公共事業関係費は3%減を続けるとしています。その一方で自公政府は、1メートル1億円の東京外郭環状道路(外環道)など4区間で、10年ぶりに高速道路の新規着工を進めようとしています。

 公共事業の総額を減らしながら大型事業を優先する自公政府のやり方は、雇用と地域経済を支える生活密着型の公共事業を圧迫してきました。必要性も雇用確保の効果も薄い大型公共事業こそ減らすべきであり、生活に密着した事業の予算はしっかり確保する必要があります。

 麻生太郎首相は「日本の安心社会への道筋を示す」とのべ、「暮らしを守るのが自民党」だと胸を張っています(6月25日の講演、日本記者クラブ)。しかし、社会保障の抑制路線に固執し、さらに消費税増税で家計を直撃する自公政治こそ「不安」の大もとです。首相に「安心社会」を語る資格は、かけらもありません。

 麻生内閣は解散・総選挙に備えて、シーリングのとりまとめを例年より1カ月も早めました。迷惑極まりない「置き土産」です。

負担能力に応じて

 暮らしと経済を立て直すために必要なのは、社会保障の抑制と消費税の増税という庶民いじめの路線を根本から転換することです。軍事費や大型公共事業に削減のメスを入れるとともに、「負担能力に応じて払う」という税制の民主的原則に立ち返ることです。

 そのためには、この10年間で7兆円に上る大企業・大資産家向けの減税を元に戻すことが、絶対に避けて通れません。



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