2009年6月30日(火)「しんぶん赤旗」
主張
ドル基軸見直し
改革の機運は高まっている
米ドルを世界の基軸通貨とする体制を見直す機運が強まっています。国連の世界経済危機サミットや経済力を強める中国、ロシア、インド、ブラジル4カ国(BRICs)の初の首脳会議でドル体制の見直しが取り上げられました。米国発の金融危機はドルに依拠した体制の不安定さを浮き彫りにしました。2度開かれた金融サミット(G20)では問題が表面化するにはいたっていません。金融危機に対処する中でドル体制が見直されるのは当然です。
金融危機の要因に
米国は1971年にドルと金の交換を停止して以来、膨大な経常赤字を垂れ流し、同時に世界からマネーを集中させてきました。それがバブルを膨らませ、経済の「カジノ資本主義」化を促進してきました。いま金融・経済危機への対処で巨額の財政出動が行われていることも、為替変動リスクを高めています。
ドル体制を転換する必要はしばしば議論されたものの、現実的でないとみなされてきました。金融危機で状況が変わりました。
ドル体制見直しを明確に主張したのは中国人民銀行の周小川総裁です。3月に発表した論文で、一国の通貨が国際準備通貨とされている構造的欠陥を指摘し、「超国家準備通貨」の創設が「望ましい」と主張しました。当面、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)の役割を強め、決済機能をもたせることを提言しました。
ドル体制見直しを求める声は広がっています。今月開かれたBRICs首脳会議の共同声明は「安定的で予測可能、多角的な国際通貨制度が強く求められている」としています。国連経済危機サミットが採択した文書は「危機によって、現在の世界準備制度の不十分さを克服する改革を求める声が強まっている」とし、SDRの機能強化にも言及しています。
各国ともドル準備資産を保有しており、ドル体制の転換は一挙には進まないとみられます。しかし、ドル体制の揺らぎは大きく、見直しは避けられません。
国連経済危機サミットに向けて経済学者のスティグリッツ氏らがまとめた報告(暫定原案)は、今回の金融危機が「新たな世界通貨体制(の構築)に対する政治的抵抗を打ち破る絶好の機会を提供している」と指摘しています。
通貨問題での地域協力の重要性も広く認識されるようになっています。新自由主義とのたたかいを通じて生まれ、中南米の9カ国が加盟する米州ボリバル代替構想(ALBA)は、地域共通通貨の創設を進めています。東南アジア諸国と日中韓が必要に応じて通貨を融通しあうチェンマイ・イニシアチブへの評価も高まっています。
一方、米国は経済覇権の基盤であるドル体制の維持を表明し、見直しの動きをけん制しています。
通貨主権放棄の日本
麻生政権は依然として強いドルへの期待を表明し、ドル体制の見直しに後ろ向きです。通貨主権を放棄した姿勢の背景には、日米軍事同盟を絶対視する自公政権の立場があります。財界が米国に依存した輸出主導型経済に固執していることも反映しています。
日本経済は内需主導での自立的発展を迫られています。そのためにもドル体制への追従から脱却することが必要です。