2009年6月28日(日)「しんぶん赤旗」
主張
郵政民営化
食いつぶし反省ない社長留任
「かんぽの宿」をたたき売るなど、郵政事業を食い物にしてきた西川善文日本郵政社長(元三井住友グループ社長)の留任を、麻生内閣が容認しました。
29日に開く日本郵政の株主総会で、西川社長は引き続き取締役として選任され、佐藤勉総務相が認可する見込みです。
財界や小泉・竹中派は「西川社長の解任は民営化の否定だ」と猛烈な圧力をかけています。それに屈した麻生太郎首相が、西川社長の辞任を求めていた鳩山邦夫前総務相を更迭した時から、すでに敷かれていたレールです。
「国民の財産」認識なし
「かんぽの宿」などの売却問題で、西川社長が設置した「第三者検討委員会」の「検証」報告では、たたき売りの実態はほとんど解明されていません。国の郵政事業で2400億円をかけて取得・建設した土地・建物を、わずか109億円で日本郵政がオリックスに売却しようとした問題です。国民の共有財産が食い物にされたのであり、疑惑の徹底解明とともに経営陣の責任追及が不可欠です。
「検証」報告を受けて西川社長が総務相に提出した業務改善計画は、経営チェック体制の強化策として「経営諮問会議」を新設するとしています。しかし「経営諮問会議」は西川社長の諮問機関にすぎない上、議長には社外取締役の中から選ぶ「会長」が就任します。現経営陣の手のひらの上の人事でしかなく、経営監視役など果たせないことは明らかです。
郵政事業という国民の共有財産を食い物にした疑惑はオリックスへの売却問題にとどまりません。
とりわけ露骨なのは、西川社長の出身企業の三井住友がらみの疑惑です。郵政公社では発行枚数の0・2%しか占めていなかった三井住友カードが、西川体制の新たなカード事業では99%を占める独占の地位に上り詰めています。事業の委託先の選定にかかわった日本郵政の幹部は、三井住友の出身者だらけでした。
オリックスの宮内義彦会長も、西川社長も三井住友銀行も、郵政民営化の急先ぽうでした。民営化の推進勢力が、よってたかって国民の共有財産である郵政を食いつぶしてきたことは、絶対に許せません。西川社長らは直ちに退陣すべきです。
「検証」報告も業務改善計画も、そもそも西川社長ら経営陣には、郵政の資産が「国民の共有財産」だという認識自体が無かったことを認めています。これは見過ごせません。こんな経営陣には郵政事業を取り仕切る資格がまったくないと同時に、国民の財産を壊す郵政民営化の根本矛盾をくっきり示しています。
民営化の根本見直しを
4年前に小泉内閣が西川氏を日本郵政社長に指名した際、当時の竹中平蔵総務相は「利益をしっかり出せる経営者でなければいけない」と強調しました。
国民の暮らしを支える事業から利益優先の経営へと、百八十度の転換を迫った郵政民営化こそ、「国民の共有財産」を忘れさせた大もとにほかなりません。
簡易郵便局の閉鎖や集配局の統廃合など地方の切り捨てが進み、「万が一にも国民の利便に支障が生じないようにする」という政府の約束は完全に破られています。郵政民営化そのものを根本から見直すときです。
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