2009年6月26日(金)「しんぶん赤旗」

主張

与謝野氏に迂回献金

腐敗政治の温床がまた現れた


 麻生太郎内閣の主要閣僚の一人、与謝野馨財務・金融・経済財政相が、「必ずもうかる」などの強引な勧誘で問題になった商品先物取引会社から、ダミーの政治団体を迂回(うかい)した献金を受け取っていたことが明らかになりました。

 迂回献金は、準大手ゼネコンの西松建設から、小沢一郎民主党前代表や二階俊博経済産業相らが受け取っていたのと、同じやり方です。しかも、ダミーの政治団体を「後援団体」と届け出、税の還付まで受けさせていたというのですから、ことは悪質です。疑惑は徹底して正されるべきです。

違法献金の疑い濃い

 明らかになったのは、「オリエント貿易」など商品先物取引のグループ5社が献金のためにつくっていた「政経政策研究会」(政経会)という政治団体が、幹部社員を会員とし会費は給与から天引きしたうえ、与謝野氏らに献金していたというものです。政治団体代表は「オリエント貿易」の社主です。

 政経会が1981年から2005年まで毎月25万円ずつ献金していたことを、与謝野氏も国会答弁で認めました。幹部社員名義の献金は本人の意思にかかわりなく給与から天引きされており、事実上の企業献金だったとみられます。

 政治資金規正法は名義を偽った献金を禁止しています。また、2000年以降は政治家個人への企業献金は禁止されています。献金が、政治団体をダミーにした、違法な献金だった疑いは濃厚です。

 見過ごせないのは、与謝野氏が政治団体を自らの「後援団体」と届け出、所得税の寄付金控除(還付)を受けられるようにしていたことです。81年から2000年に与謝野氏が落選するまでは与謝野氏の後援団体でした。落選後は与謝野氏と同じ派閥で同じく政経会から献金を受けていた渡辺喜美元行革担当相(現在は自民党を離党)の後援団体となっています。

 政治家が「後援団体」と届け出なければ、寄付金控除を受けることはできません。ダミーの団体と知りながら「後援団体」と届け出、所得税の寄付金控除を受けさせていたとすれば、文字通り国民の税金を食い物にしたことになります。政治団体の献金を取りまとめた企業はもちろん、政治家の責任が問われます。

 しかも与謝野氏が政経会から献金を受け取り、政経会を後援団体と届け出ていた期間に、与謝野氏は先物会社を指導・監督する通産相(現経済産業相)でした。先物業界に詳しいことでも知られます。与謝野氏は「便宜を図ったことは一切ない」といいますが、献金の見返りに手心を加えていなかったか徹底した糾明が不可欠です。

違法献金の根を絶つ

 与謝野氏が商品先物取引業界から巨額の政治献金などを受け取ってきたことは、これまでもたびたび問題になってきました。新たに明らかになった疑惑に対し、まず与謝野氏自身が徹底して事実を明らかにするのは当然です。

 同時に、迂回献金など、一切の違法献金の根を絶つために、企業献金そのものの全面禁止に取り組むべきです。企業献金が腐敗政治の温床となることは、「西松」の場合も、今回も明白です。民主党は企業献金禁止を「3年後」に先延ばしし、それまでは受け取り続けるとしていますが、禁止に一刻の猶予もおくべきではありません。



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