2009年6月24日(水)「しんぶん赤旗」
主張
「骨太方針」
選挙目当てのごまかし決着だ
麻生内閣が2009年の「経済財政改革の基本方針」(「骨太方針」)を決めました。
社会保障費の自然増を毎年2200億円削減する抑制路線の扱いは二転三転した揚げ句、与謝野馨財務相が「来年度は削減しない」と表明して決着しました。
消費税増税と一体で
社会保障の抑制路線は02年度予算からスタートし、3年前の「骨太方針06」で2200億円の削減を11年度まで毎年続ける方針を決定しています。今回の「骨太方針」は、「『基本方針2006』等を踏まえ」「歳出改革を継続」すると明記しています。抑制路線を継続する一方で、「来年度は削減しない」という一時的な措置でお茶を濁すのは、選挙目当てのごまかし以外の何物でもありません。
高齢化が進んでいるにもかかわらず日本の社会保障給付の水準は、「中福祉」といわれるドイツ、フランスの6割程度です。
自公政府は社会保障の抑制路線によって、社会保障のあらゆる分野で負担増と給付カットを進め、支えを必要とする国民を制度から排除してきました。「医療難民」「介護難民」が大きな社会問題となり、生活保護の受給資格があるのに実際には保護を受けられない人が8割に及びます。
すでに歴代の厚生労働相さえ、社会保障にはもう削れるところなどないと発言せざるを得ないような状況に立ち至っています。悲惨な結果をもたらした抑制路線を強行した自公政府の責任は極めて重大です。社会保障予算を削減から拡充に転換することが、日本社会の切実かつ緊急の課題となっていることは明らかです。
見過ごせないのは、自公政府が社会保障の抑制路線と消費税の増税を一体不可分のものとして追求していることです。「骨太方針06」を議論した経済財政諮問会議で、当時の小泉純一郎首相は次のようにのべています。「増税してもいいから必要な施策をやってくれという状況になってくるまで、歳出を徹底的にカットしないといけない。そうすると消費税の増税幅も小さくなってくる」
「骨太方針06」の枠組みは、国民向け予算をばっさり削った上、基礎的な財政収支の黒字化に足りない分を消費税増税で穴埋めするというものです。もともと貧弱な社会保障を国民が音を上げるまでカットし、さらに低所得者ほど負担が重い消費税を増税するなどという枠組みこそ、根本的に間違っています。
「来年度は削減しない」というのは、「再来年は削減する」「その分は消費税増税で穴埋めする」ということでしかありません。
大企業に応分の負担を
自公政府の「構造改革」は貧困を大きく広げ、国民の暮らしをずたずたに引き裂いてきました。これ以上の社会保障削減や逆進性の強い消費税の増税を受け止める“余力”は、もはや日本の経済・社会に残されてはいません。
これまでの社会保障の削減分は直ちに元に戻すべきです。
歳入増の可能な選択肢は、数々の優遇税制で巨額の減税を受け、欧州に比べ格段に低い社会保険料負担に甘えてきた財界・大企業に応分の負担を求めることです。
所得税・相続税の最高税率引き下げや証券優遇税制など、行き過ぎた減税を受けてきた大資産家にも相応の負担を求めるべきです。