2009年6月23日(火)「しんぶん赤旗」
米基地整備に2兆円超
「思いやり」予算30年
4800万円住宅・娯楽場・原子力空母停泊地まで
日米地位協定上も日本に負担義務のない在日米軍「思いやり」予算のうち1979年度から始まった基地建設費(提供施設整備=FIP)が2008年度までの30年間で約2兆1283億円に達することが判明しました。日本共産党への防衛省提出資料や予算要求資料などから分かったもので、全国66の米軍基地で1万2872件の施設が建設・改修されました。
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日本政府は今後も国内基地の建設を続けつつ、「思いやり」予算以外にも米領グアムでの海兵隊基地建設費を負担するなど、米軍基地建設を国外まで広げようとしています。
内訳を見ると、件数では家族住宅1万1363件、兵舎230件と住宅関連が約9割を占めています。家族住宅は建築費だけで1戸あたり約4800万円。日本の平均的な住宅よりはるかに割高です。これ以外にも学校や娯楽施設、病院、運動場、艦船や航空機などの修理施設、戦闘機の格納庫や耐爆シェルター、滑走路、原子力空母が接岸できるバース(係留施設)など68項目におよんでいます。
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基地別に見ると、件数では米空軍三沢基地(青森県)の2214件が最多。金額では米海兵隊岩国基地(山口県)の3520億円が最高となっています。
「思いやり」予算の「提供施設整備」費は年々、減少しています。その一方、(1)在沖縄海兵隊の訓練移転のために自衛隊の矢臼別(北海道)、王城寺原(宮城県)、日出生台(大分県)の各基地内に専用施設を「訓練移転費」名目で建設する(08年度までの累計109億円)(2)国土交通省の道路特定財源で米軍将校用の住宅を建設する(長崎県佐世保市、28億円)など他省庁の予算を充てる(3)グアム「移転」や沖縄・辺野古の新基地建設など「総額2〜3兆円」(米国防総省)の在日米軍再編経費の負担―といった新たな基地建設が広がっています。
米軍再編では、沖縄の米空軍嘉手納基地のF15戦闘機の訓練移転のため、自衛隊の新田原基地(宮崎県)に総工費88億円で米軍専用施設を建設しています。グアム「移転」では、今年度予算で初めて建設費346億円が計上されました。
■拡大する在日米軍基地建設の費目
●「思いやり」予算(日米地位協定の拡大解釈)
○「提供施設整備」(FIP) 1979〜2008年度 2兆1283億円
○在沖縄海兵隊訓練移転費 1997〜2008年度 109億円
●「思いやり」予算以外のもの
○SACO(沖縄に関する特別行動委員会)経費 1996年度〜
○在日米軍再編経費 2009年度〜
(グアム移転費346億円、新田原基地88億円=総額2〜3兆円)
●防衛省以外の他省庁予算 不明
米軍「思いやり」予算
訓練・修理・住環境 日本の基地は“最高”
米国防総省の「基地構造報告」2007年版によると、在外米軍基地の資産価値で、在日米軍基地は上位3位までを独占しています。訓練施設や航空機・艦船の修理機能、米兵の居住環境など、どれをとっても最高水準にあるのは、日本政府が国民の生活を犠牲にして、膨大な税金を投入してきたからです。米同盟国で基地建設費のほとんどを支出しているのは日本だけです。(竹下岳)
原点は日米密約
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米軍基地建設費など「思いやり」予算の原点となったのが、1972年の沖縄の本土返還に伴う日米密約です。表向きの返還費用3億2000万ドルとは別に、本来は米側が支払うべき日本従業員の労務費1000万ドル、岩国・三沢両基地の整備費6500万ドルを負担するなどの密約を交わしました。
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総額は5兆円超
さらに73年度から、関東地域の米空軍基地を横田基地に「集約」する「関東計画」が実行され、政府は78年度までの間に450億円を負担しました。
そして78年度から日米地位協定を拡大解釈し、「思いやり」予算として労務費を公然と負担。79年度から基地建設費をほぼ全面的に負担するようになりました。
地位協定上、在日米軍駐留経費のうち日本側に義務づけられているのは基地そのものの提供(地代、基地周辺対策費)だけです。ところが政府は「思いやり」予算を労務費・基地建設にとどまらず、水光熱費や訓練移転費と拡大し、当初の61億円から現在は2500億円規模まで拡大。総額は5兆円を超えています。
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次々新たな費目
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基地建設の内容を見ると、狭いものでも約100平方メートル、最大で約230平方メートルに達する家族住宅、1クラス20〜25人の小中学校、核攻撃にも耐える戦闘機用シェルター(三沢、嘉手納)、原子力空母用のバース(横須賀)、長さ2440メートルの滑走路(岩国)など生活関連から戦闘関連まで何でもありです。
90年代に入ると、「思いやり予算」分に加え、96年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)関連経費、沖縄からの訓練移転費、さらに在日米軍再編経費と、屋上屋を重ねるように、新たな費目を次々と生み出してきました。
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国民生活がかつてなく深刻な中、米軍「思いやり」予算に対する国民の批判が大きく高まっています。08年4月には、参院で「思いやり」予算特別協定が否決され、日米両政府に大きな危機感を与えました。
「(日本で)仮に現在のような多額の財政支援が受けられなくなった場合、アメリカのプレゼンス自体が、ずっと小規模で、異論のあるものになりかねない」。ケント・カルダー元駐日米大使特別補佐官は著書『米軍再編の政治学』でこう指摘し、日本政府の財政支援がなくなれば、基地を維持する上で致命的な打撃となることを告白しています。
一方、日本政府は米軍が去ることを恐れ、ひたすら基地整備を続けています。来年6月23日の現行安保条約50年に向けて、日米同盟絶対の政治を転換する取り組みの強化が求められます。
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