2009年6月20日(土)「しんぶん赤旗」
主張
「西松」違法献金事件
小沢氏ら政治家の責任免れぬ
準大手ゼネコン「西松建設」による小沢一郎民主党前代表への違法献金事件で政治資金規正法違反などの罪に問われた、同社前社長国沢幹雄被告の初公判が開かれました。注目されるのは、検察側が冒頭陳述で、献金を受け取っていた小沢氏の事務所が東北地方の談合組織に強い影響力を持ち、「天の声」を出していたなどの事実を明らかにしたことです。
国沢被告は起訴事実を認めています。献金を受け取った小沢氏の公設秘書の裁判は今後始まりますが、一連の事件の裁判を機に、小沢氏ら政治家の責任があらためて問われるのは避けられません。
言い訳は通用しなくなる
「西松」は、同社OBが代表を務めるダミーの政治団体を使って、小沢氏や二階俊博経済産業相ら民主、自民の国会議員などに、政治献金やパーティー券の購入などを行ってきました。政治資金規正法は、政治家個人への企業献金を禁止しています。このうち小沢氏には断トツの約2億円が献金されており、国沢被告らが政治資金規正法違反などに問われました。小沢氏の公設秘書も政治資金収支報告書にうそを届け出たなどの疑いで、起訴されています。
国沢被告が起訴事実を認めたことで、政治団体を偽装した献金が「西松」の企業献金を隠すための違法献金であったのはいよいよ明白です。検察は献金の偽装が小沢氏側の要請によるものだったことを明らかにし、逮捕された小沢氏の公設秘書が政治団体からの献金を「西松」の献金と認識していたと認めた調書も提出しました。
それに加え、検察側が冒頭陳述で、小沢氏の事務所が東北地方の談合組織に強い影響力を持っており、岩手・秋田両県での公共事業に「天の声」を出していたと指摘して、「西松」の献金が小沢事務所との関係改善のためだったと認めたのは重大です。
小沢氏はこの問題で、「一点もやましいこともない」と、一貫して違法献金だったことを認めず、疑惑についての国民への説明責任も果たしていません。民主党もそうした小沢氏の疑惑を追及せず、代表辞任後も筆頭代表代行の重責を任せ、秘書の容疑は「形式犯」だなどと主張する、第三者委員会の報告を公表しました。
しかし、秘書の取り調べでの発言や検察の冒頭陳述どおりなら、小沢氏や民主党の言い訳は、まったく通用しないことになります。とりわけ公共工事での小沢事務所の「天の声」を期待したという検察の冒頭陳述にもとづけば、献金は文字通り見返りを期待したことになり、賄賂(わいろ)性は明白です。小沢氏と民主党がますます重大化する疑惑に正面から答えることは、絶対に免れられない課題です。
全面禁止こそ政治の責任
もともと、営利が目的の企業が政治家に献金するのは、見返りを期待するためです。見返りがなければ、経営者は背任を追及されることになります。企業献金は、政治をゆがめ、民主主義に反します。
「西松」違法献金事件では、多額のパーティー券を買ってもらっていた二階経産相も、検察審査会で「不起訴不当」の判断が示されています。違法な献金を反省し、国民に疑惑の説明責任を果たすとともに、法律の改正を待つまでもなく、自ら全面禁止に踏み出すことこそ、政治の責任です。