2009年6月19日(金)「しんぶん赤旗」
臓器移植法改正4案採決 日本共産党の見解
国民的議論と合意形成必要
日本共産党の、こくた恵二国対委員長が18日、臓器移植法改正法案4案採決に先立って発表した見解は次のとおりです。
一、拙速な採決には反対だ、ということをあらためて表明したい。
臓器移植法は、人の生死にかかわる極めて重大な法律である。脳死臓器移植によってしか救命が困難な疾患をかかえる患者を救う道をひらくことは重要な課題であるが、人の命にかかわるだけに慎重さと厳格さが不可欠である。従って、その改正には、正確な医学的知見を共通認識にし、国民的な議論をおこない、十分な審議をつくして、合意を形成する努力が必要である。
ところが、4法案の厚労委員会での審議は8時間にすぎない。しかも専門の委員会が議論の集約もできないまま、「中間報告」をおこない、本会議でいきなり多数決で決めてしまうようなやり方は乱暴きわまりない。審議をつくさず採決だけを優先することは、脳死臓器移植についての国民的理解と合意形成の障害ともなりかねない。こうしたやり方はとるべきでないということを改めて強調したい。
一、4法案の評価について、わが党として検討してきた結果をのべたい。
そもそも、現状では、脳死を「人の死」とすることには、国民的な合意はない。また、子どもの脳死判定基準については、医学的にも結論がでていない。さらに、臓器提供者本人の意思表示がおこなわれていない場合に、家族の同意で脳死判定や臓器の摘出をおこなうことの是非についても国民的な合意はない。
こうした点に照らして、子どもに対する脳死判定、臓器移植に道をひらくA案、B案、D案にはそれぞれ問題がある。
A案は、一律に「脳死を人の死」とし、年齢制限なくすべて家族の同意で臓器提供を可能とするものである。またD案は、15歳未満の子どもについては家族の同意のみで脳死判定と臓器提供を可能にするものである。またB案は、意思表示の可能年齢を12歳以上に引き下げるものだが、その根拠を合理的に説明できていない。
これに対してC案は、脳死判定を厳格化するというものだが、現行の脳死判定基準を厳格化する必要性について、医学界での合意は得られていない。
4案のどの案についてもその根幹で国民的合意が得られていない問題をかかえている。従って、わが党は、どの案についても賛成することはできない。
しかし、これらの問題点については、十分な国民的議論によって、今後、合意が形成されていくこともありうるので反対はせず、「保留」の態度をとることとした。
一、以上の立場で、本日の本会議にのぞみ、採決にあたっては、記名投票に加わらず、棄権する。