2009年6月19日(金)「しんぶん赤旗」
主張
郵便不正事件
政官業癒着の根本にメスを
大手広告代理店や印刷会社、家電量販店などが関与して障害者団体の出版物を偽装した大量の広告用の郵便物を送り、巨額の料金を免れていた郵便不正事件は、ついに厚生労働省の現職局長(その後辞職)が逮捕されるという事態に至りました。
局長などの逮捕容疑は、自称障害者団体の会長の求めに応じて虚偽の証明書を作成したというものですが、その背後には国会議員の働きかけや、法案を通すための取引が指摘されるなど、事態は深刻です。政官業癒着の根本に踏み込んで、メスを入れることが求められます。
障害者団体を食い物に
多くの障害者と障害者団体は深刻な経済危機のもとで、毎日の生活や団体の運営にもことかく、きびしいやりくりを余儀なくされています。そうしたなかで切実に求められているのが、情報にふれる機会が制約される障害者と団体を結ぶ、機関紙の郵送料金の割引制度です。その制度が大企業や障害者と関係のない団体に悪用されていたことは、障害者を食い物にする、言語道断の事件です。
事件への関与が明らかになったのは、大手広告代理店「博報堂」の子会社や、家電量販店「ベスト電器」などで、負担を免れていたのはいずれも数億円単位の巨額に上ります。その分は国民が負担していたことになり、これらの企業と不正を許した郵政当局が、きびしく批判されるのは当然です。
障害者団体への料金割引制度の適用は、障害者団体としての活動実態があり、機関紙の発行にも一定の要件が求められるなど、きびしい条件があります。ところが今回厚労省の現職局長が逮捕された事件では、障害者団体として活動実態のない「凛(りん)の会」(現・白山会)に認めるため、当時企画課長だった局長が部下の係長に指示し虚偽の証明書を出させたというのです。まじめに活動する障害者団体を愚弄(ぐろう)するものです。
しかも、その後の調べで、局長も、直属の上司だった当時の部長の指示を受けており、その際、国会議員から要請された「議員案件」だといわれていたことが明らかになりました。民主党国会議員の名前も取りざたされています。事実とすれば政官業のみにくい癒着そのものです。
元部長らが「議員案件」として虚偽の証明書発行を認めたのは、当時厚労省では障害者自立支援法を準備しており、法案への賛成を期待したからだという背景も伝えられています。障害者自立支援法は、社会保障予算の削減のため、障害者が施設やサービスを利用するごとに1割の負担を押し付けている悪法です。自民、公明が賛成しました。障害者を苦しめる悪法のために違法な証明書発行に手を貸すというのは、障害者を二重三重に踏みつけにするものです。
国会で徹底追及を
事態が民間企業や自称障害者団体の会長、厚労省幹部らの不正にとどまらず、国会議員がかかわり、法律の制定にもかかわる問題に発展したことは重大です。司法当局が厳正・公正に捜査するとともに、国会自身がその責任として、真相解明にあたるべきです。
日本共産党は障害者自立支援法に反対し、廃止を求めています。この際制定の過程を含め、同法を根本から見直すことも当然です。