2009年6月12日(金)「しんぶん赤旗」
現職と改革派 事実上の一騎打ち
イラン大統領選きょう投票
経済回復 外交が焦点
【テヘラン=松本眞志】イランでは12日、第10回大統領選挙が実施されます。イスラム教シーア派聖職者による厳格な統治の枠内での民主主義と改革をめぐり、4620万人有権者の動向が注目されています。
今回の選挙は、厳格なイスラム的規範に忠実な保守派陣営とイスラム教的規制の緩和と言論の自由などを訴える改革派の争い。保守派からは現職のアハマディネジャド大統領、レザイ元革命防衛隊司令官、改革派からはムサビ元首相、カルビ元国会議長が立候補しています。
選挙前の世論調査によると、首都テヘランやマシュハド、イスファハンなどの主要都市では、ハタミ元大統領の応援を受けたムサビ氏がリード、アハマディネジャド氏がこれを追う事実上の一騎打ちとなっています。
首都テヘランのテヘラン大学前では10日、ムサビ、アハマディネジャド両派の支持者が数千人規模でデモや集会を繰り広げました。 アハマディネジャド大統領の4年間、対前年比24%ともいわれるインフレが国民生活を直撃、政権に対する国民の不満を強めました。ガソリン代は2年前から4倍に跳ね上がっています。失業も深刻で、建築業の低迷で200近い関連業種が打撃を受けたとの報道もあります。
外交問題では、核開発をめぐる欧米との対立、第2次大戦下のナチスによるユダヤ人虐殺を疑問視する発言など、外交的配慮を欠いた態度が、イランを国際的に孤立させたとの批判も生まれています。
改革派の元テヘラン市議のアトリヤンファル氏は本紙の取材に対し、大統領選の意義は「経済回復と、イランの対外的なイメージを改善することだ」と語りました。
今回初めて行われた候補者が対決するテレビ討論で、アハマディネジャド氏が政策を語らず、相手候補の中傷を行ったことが国民の失望を広げたともいわれています。一方、聖職者統治のもとでは真の自由は得られないとして棄権する動きも見られます。