2009年6月8日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「米軍思いやり」

「軍事同盟絶対」で枠広げるな


 日本が「米軍思いやり」で負担する米軍施設の建設や移転の費用を、公共事業費でまかなう新たな手法が問題になっています。

 米軍活動に必要なものは米軍の負担と米軍地位協定で決まっており、そもそも日本の負担に道理はありません。国民生活予算を削減する一方で、米軍には年間2千億円もの巨額をつぎ込む「思いやり予算」への国民的怒りは大きくなるばかりです。日米軍事同盟絶対の立場で、公共事業費まで使って「思いやり予算」を維持するのは、国民の願いにも反します。

米軍の要求満たすため

 「思いやり予算」は、米軍家族住宅や教会、戦闘機シェルターや演習費など、米軍活動に関するほとんどすべてを対象にしています。防衛省が所管する軍事費の一部です。ところが最近、国土交通省や農林水産省の公共事業費を使う動きが表面化しています。

 長崎県佐世保市では国交省の道路特定財源を使い、土地の造成費を含め1戸当たり2億5千万円にもなる米軍将校住宅を11戸建てました。もともと米軍が1990年に計画していた住宅建設を道路建設に伴う「移転補償」という口実で実施したものです。「思いやり予算」を防衛省以外の省に肩代わりさせた最初の事例です。

 さらに沖縄県伊江島では、農業用の用水確保を目的とした農水省の「国営かんがい排水事業」の一環として、古くなった米軍隊舎を別の場所に移転・新築する計画が進んでいます。財源は防衛省が所管する「思いやり予算」ではなく、農水省の予算の使用が検討されています。事業の一部が基地にかかるからというのは口実で、「思いやり予算」を農水省に肩代わりさせるのがほんとうの狙いです。

 背景には、「思いやり予算」が2千億円もの巨額を維持しているとはいえ、国民の反発で減らさざるをえなくなっていることがあります。SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費を含めた「思いやり予算」は、2005年度2358億円が09年度は2039億円です。このわずかな「削減」にさえ米軍は反発し、「軍事費を増やせ」と圧力をかけています。日本の政治への不当な干渉です。

 こうした矛盾をかわすため、政府は、防衛省以外の省にも「思いやり予算」を負担させることで、米軍が満足する水準を確保しようとしているのです。「軍事同盟絶対」の卑屈な態度です。

全廃こそ基地なくす道

 米軍はアメリカの軍事戦略のために日本に駐留しているのであって、「日本防衛」のためにいるのではありません。しかも米兵犯罪をはじめ日本国民の安全も脅かしています。「思いやり予算」には一片の道理もありません。

 米政府は、日本が「米軍部隊の費用の70%を負担しているのだから、アメリカ国内におくよりも日本に駐留させる方が費用はかからない」(95年、ナイ国防次官補=当時)といってきました。駐日アメリカ大使特別補佐官も歴任したケント・カルダー米ジョンズ・ホプキンス大学教授は、「思いやり予算」が減れば「日本は基地所在地として魅力がなくなる」といっています(08年)。

 「思いやり予算」は国民にとり有害無益です。基地をなくし、平和な日本をつくるためにも、「思いやり予算」の全廃が重要です。



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