2009年6月7日(日)「しんぶん赤旗」

主張

新型インフルエンザ

のどもと過ぎても熱さ忘れず


 兵庫や大阪などで相次いでいた新型インフルエンザの国内感染者の新たな発生が減少し、休校していた学校の再開などが相次ぎました。一部の自治体が「安心宣言」を出し、政府の中からも“終息”を口にする動きなどがあります。しかし安心は禁物です。まだまだ小康状態とみておくべきです。

 世界的にも感染者は拡大しており、すでに2万人を突破しました。寒さが本格化する南半球での感染拡大を懸念する声もあります。日本でも秋から冬にはインフルエンザが流行することも念頭に、のどもと過ぎても熱さを忘れず、備えを整えることが重要です。

水際と同時に国内対策を

 今回の国内感染拡大は、空港での検疫など、“水際”で国内への侵入を防止する対策を強めていたのに、結果として侵入を防止できず、感染が拡大するという手痛い経験となりました。兵庫での国内感染の発生は、成田空港での海外からの入国者から感染者が見つかる前から始まっていたとみられることも、明らかになりました。

 検疫など水際対策に過大に依存しすぎたため、国内での対策が遅れたという批判もあります。しかし新型インフルエンザがもともと海外で発生したものである以上、適切な方法で国内への侵入を防ぐ対策をとる必要性は明らかです。すでに世界で70にのぼる国や地域に広がっているのを踏まえ、ふさわしいやり方で検疫などの対策を続けることは不可欠です。

 それを前提としつつ、いま飛躍的に強めなければならないのは、すでに国内にも感染が定着したとの認識にたち、感染者の早期発見や治療、拡大防止などの対策をとることです。高校生などに感染者が一気に広がった兵庫や大阪では、政府の指針で定められた発熱などの症状があった場合の電話による事前相談や発熱外来でまず診断するなどの体制が間に合わず、一般の病院や診療所が対応に追われるという事態になりました。

 発熱外来の設置数ひとつとっても、6月初めまでの厚生労働省の集計でも全国で1000カ所にもなりません。これでは大量に感染者が発生すれば対応できません。保健所の廃止など地域の保健体制を破壊し、医師や病院の不足などを放置してきた政府の責任は重大です。国が必要な財政負担も行い、予想される規模に見合った体制を整えることは急務です。

 治療薬としてはタミフルなどが効くといわれていますが、新型インフルエンザに対応するワクチンの開発や製造はこれからです。開発・製造を急ぐ必要があります。

 今回の新型インフルエンザは、症状は軽くても感染力は強いことが証明されました。海外での経験などで、糖尿病患者や人工透析を受けている人、妊婦では重い症状が出ることも明らかになりました。そうした人への対策を急ぎ、徹底していくことも必要です。

経済被害にも対策を

 見落とせないのは、日常生活や経済活動への対策です。兵庫などでは学校だけでなく保育所や福祉施設が閉鎖されたため、仕事に通えなくなったなどの苦情が相次ぎました。商店や観光などへの経済的な打撃も深刻です。臨時保育や休業補償などの準備も重要です。

 本格的な拡大に対応できるよう、小康状態のうちに体制を整えるかどうか、問われています。


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