2009年6月6日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「敵基地攻撃」

軍事での応酬は危険招くだけ


 自民党国防部会の防衛政策小委員会が、年末に政府が策定する新「防衛計画の大綱」に「策源地攻撃能力の保有」を盛り込むことを求める「提言」をまとめました。国防部会の正式了承を経て、政府に提出されることになります。

 「策源地攻撃能力の保有」とは、撃たれる前に他国の基地に撃ち込める攻撃兵器を、日本が持つということです。文字通り「敵基地」への先制攻撃に道を開くことになります。憲法違反の戦争態勢づくりを許すわけにはいきません。

先制攻撃に道開く

 「提言」は敵基地への攻撃は「法理上可能」という政府見解をくりかえすだけでなく、その能力を持つことを公然と要求しています。弾道ミサイルの「策源地」を攻撃するため、海上発射型巡航ミサイルの導入を明記しています。

 「敵基地攻撃」論は、政府が自衛隊政策の原則だとする、「専守防衛」論とも矛盾しています。「軍事対軍事」の危険きわまりない悪循環をひきおこし、国民を戦争にまきこむことになる暴論です。

 そもそも「敵基地攻撃」が「法理上可能」という政府の説明がごまかしです。ミサイルへの燃料注入などを日本攻撃の「着手」とみなして撃たれる前にミサイル基地を攻撃するというのはむちゃくちゃです。攻撃を受けていないのに攻撃するのは、どこからみても先制攻撃そのものです。

 こうした暴論は国連憲章のもとでは通用しません。「国際連合加盟国に関する限り、武力攻撃が発生した場合でなければ、自衛権は行使できない」(1951年3月、西村熊雄外務省条約局長)のです。しかも政府は、「平生から他国を攻撃するような、脅威を与えるような兵器を持つのは憲法の趣旨とするところではない」(59年3月、伊能繁次郎防衛庁長官)ともいっています。敵基地攻撃のための能力を持つなどというのは、どこからみても成り立ちません。

 「敵基地攻撃」の口実は北朝鮮の核兵器開発です。しかし核実験の強行を機に日本が軍事的対応を強め、北朝鮮はさらに軍事的対応の強化で応酬するというのでは、東北アジアの緊張を激化させることにしかなりません。

 北朝鮮の核実験は絶対に許されない暴挙です。いま求められているのは、国際社会の一致協力した行動で北朝鮮に核兵器の開発計画を放棄させ、朝鮮半島の「非核化」をめざす6カ国協議に無条件に復帰させることです。国際社会の真剣な努力をよそに、日本が「策源地攻撃能力の保有」を声高に叫ぶことは、北朝鮮に核兵器開発を正当化させる口実を与え、北朝鮮に「核兵器を捨てよ」と要求する立場を失わせることになります。

核兵器廃絶の前進こそ

 オバマ米大統領が「核兵器のない世界」の実現を米国の国家目標にするとの方針を発表して以来、核兵器をなくそうという機運が世界でかつてなく盛り上がっています。この動きを本格化させることこそが、朝鮮半島の非核化の動きを後押しすることにもなります。

 自民党の提言は、「米軍の情報、打撃力とあいまった、より強固な日米協力体制を確立することが必要」とも主張しています。世界の前向きの変化は見ようともせず、日米軍事同盟にはしがみつくという自民党には、日本の平和と安全をまかせることはできません。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp