2009年6月3日(水)「しんぶん赤旗」
主張
GM破産
利益最優先経営の破たん
米国のGM(ゼネラル・モーターズ)は1日、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の申請をおこない、ついに倒産しました。
オバマ大統領は同日、GMの破産申請を受けてただちに声明を発表し、同社のすみやかな再建のために、米政府としてあらゆる手を尽くすと述べました。
環境の変化に対応できず
トヨタに抜かれるまで1世紀近くにわたって世界最大の自動車企業として君臨してきたGMの破産は、米国の経済危機の深刻さを象徴しています。
GMは1908年の創業以来、たんに世界一の自動車企業というだけでなく、さまざまな経営手法を開発して、20世紀の大企業経営の模範とされてきました。たとえば、製品のモデルチェンジなどのマーケティングや会計手法、事業権限の分権化などの組織管理手法などは、すべてGMが初めて採用したといわれています。
しかし、多国籍企業として世界市場を支配したGMは、しだいに巨大企業としての社会的責任よりも短期の利益追求、とりわけ株主利益を最優先させるようになりました。GMの破産は、こうした米国型経営の破たんを示しており、社会的責任を忘れた大企業経営への反省が求められます。
経営危機が表面化して以来、GMの経営陣は、世界的な金融危機と世界恐慌による自動車販売の落ち込みをあげ、なかなか経営責任を認めようとしませんでした。
たしかに“自動車恐慌”ともいえるほど自動車販売は世界的に急減しています。この背景には、たんに金融危機や実体経済の恐慌の影響だけではなく、深刻な地球環境の危機のもとで、低燃費の環境対応の車の開発など、自動車産業のあり方が根本的に問われていることがあります。GMは、目先の利益ばかり追求する米国型経営のために、こうした地球にやさしい新車開発の面でも、欧州、日本、新興国の企業との競争で、大きく立ち遅れてしまいました。
GMの場合、退職者の年金や医療保険などの企業負担や債務が経営を圧迫してきたともいわれます。しかし、大企業として、その労働者の年金・医療などの社会保険に応分の負担をすることは当然の責任です。
GMの再建にあたっても、株主の利益優先でなく、従業員や退職者の権利を優先させることが求められます。この点では、米国の場合は、国家的な統一した社会保障制度が確立していないという問題もあります。その意味では、米国の資本主義のあり方も問われています。
救済求められる関連企業
GMの再建自体は米国の国内問題ですが、各国に工場や販売拠点をもつ多国籍企業としてのGMの破産は、国際的にも大きな影響をもっています。GMへの部品納入の日本企業も102社あるといわれ、その救済策も求められます。
破産後の新GMの株式は、米政府が60%を握ることで実質的に「国有化」し、経営規模を大幅に縮小して再建の道を探ることになります。
オバマ政権のもとで実質「国有化」されたGM再建の行方には、21世紀の大企業経営のあり方、自動車産業のあり方など、国際的にも関心を持ち、注視していく必要があります。