2009年6月2日(火)「しんぶん赤旗」
主張
衆院比例定数削減
民主主義破壊の暴挙やめよ
衆議院の比例代表を狙い撃ちし議員定数削減の動きが、自民、民主の両党から相次いでいます。
自民党は古賀誠選挙対策委員長や菅義偉同副委員長らが50人程度の定数削減を次の総選挙政策に盛り込むよう主張し、比例の総定数に相当する180削減を求める意見まででています。民主党は鳩山由紀夫氏が先の代表選挙で、比例定数80削減を公約しました。
比例定数の削減は、小選挙区制が中心の現在の衆院の選挙制度で唯一国民の意思を議席に正確に反映している比例代表選挙の役割をさらに弱めるものです。文字通り民主主義破壊の暴挙です。
選挙制度のゆがみ拡大
衆院の選挙制度は、かつては1選挙区で何人もの議員を選ぶ大選挙区や中選挙区の制度がとられていました。ところが自民党がたびたび大政党に有利な小選挙区制の導入をたくらみ、ついに1990年代の初めに、自民党と当時「非自民」とよばれた現在の民主党や社民党の前身の政党によって、小選挙区比例代表並立制といわれる現在の制度が導入されました。
1選挙区で1人の議員を選ぶ小選挙区制は大政党に圧倒的に有利で、第1党か第2党でなければ議席を争うことも難しい一方、多数の有権者の投票が議席に結びつかない死票になる、非民主的な選挙制度です。自民党や当時の「非自民」各党は、「政権交代が起こりやすい」などの口実で小選挙区制の導入をたくらみ、政党助成金の導入とあわせ、これこそ「政治改革」だと主張しました。
一部には衆議院のすべての議席を小選挙区で選ぶ、完全小選挙区制の導入論もありましたが、国民の批判が強く、結局比例代表制と組み合わせた現在の制度がつくられました。しかし、小選挙区と比例代表を同数とする案さえ採用されず、自民と「非自民」各党が合意したのは小選挙区で300議席、比例代表で200議席を選ぶという、小選挙区制中心の制度です。
しかも1999年には、「行政改革」の一環で衆院の定数を削減すると称して、結局は比例代表だけで20議席減らし、比例代表の比重はさらに引き下げられました。
今回、自民・民主両党が比例代表の議席をさらに削減しようとしているのは、大政党に有利な選挙制度をさらに改悪しようというものです。民主がいうように比例を80削減すれば、全体の4分の3は小選挙区で選ぶことになり、選挙制度のゆがみはいよいよ激しくなります。自民党のいう定数180削減をすべて比例でやれば文字通り比例代表の廃止です。衆院は大政党に占領されることになります。
多様な民意を排除する
自民党や民主党は議員定数の削減を、ムダをなくすため身を削るものだといいますが、それこそ比例代表削減の本当の狙いをごまかすものです。削るのはムダではなく、比例代表なら議席に反映される多様な民意です。
自民党や民主党の策動を許せば、消費税の増税でも憲法の改悪でも、国会のなかでは国民の反対を気にしないで、思いのままやられることにもなりかねません。
比例定数を削減し、国会から国民の意思を閉め出す策動は、直ちに中止すべきです。小選挙区制は廃止し選挙制度は民意を正確に反映する比例代表を基本にというのが当然であり、世界の流れです。