2009年6月1日(月)「しんぶん赤旗」

主張

補正予算成立

暮らしと景気に役立たない


 麻生太郎首相は成立した補正予算について、「景気の底割れを防いで、かつ、その内容は生活者支援」だとアピールしています。

 日本経済の悪化は欧米より急激です。もともと家計が冷え込んでいた上、輸出頼みを強めてきた大手製造業が一気に「派遣切り」「期間工切り」に走ったためです。

 家計を冷え込ませてきたのは「構造改革」による不安定雇用の拡大であり、税と社会保障の負担増・給付減です。賃金が減って税と保険料が増え、将来不安が広がりました。

「感謝申し上げる」

 自民党、公明党が補正予算を成立させた5月29日、政府が発表した生産と雇用の経済指標にはくっきり明暗がつきました。

 4月の鉱工業生産は過去2番目の大幅上昇で、政府は先行きも上昇を予測しています。他方で完全失業率は5%、有効求人倍率は過去最低の水準に悪化しました。2001年に完全失業率が初めて5%に達した際は、4%から5%に上がるまで38カ月かかりましたが、今回はたったの5カ月しかかかっていません。雇用の悪化は今後も続く見込みです。

 国民負担増と雇用破壊の流れを転換しない限り、暮らしと経済は立て直せません。

 補正予算に盛り込まれた雇用や医療、子育てなど国民向けの対策は一時的、一回きりのばらまきです。麻生内閣は、社会保障の自然増を毎年2200億円も削減する抑制路線をやめるつもりはないと再三表明しています。消費税を増税する計画が国民の不安に拍車をかけています。

 「経済界の要望を幅広く取り入れてもらっており、改めて感謝申し上げる」。補正予算が衆院を通過した翌日の5月14日、自民党と日本経団連の「政策を語る会」で、経団連側がお礼の言葉をのべました。自民党は与謝野馨財務相、保利耕輔政調会長ら幹部が出席しながら、財界トップ企業の雇用破壊に抗議どころか苦言を呈することすらできませんでした。

 あまりにも情けない対応であり、だれのための補正予算かをはっきりと示した一幕です。

 麻生首相は「未来の産業につなげていく」と言って、エコカー助成や家電のエコポイントを目玉にしています。家計の可処分所得が安定して増える見通しが立たないときに、一時的な助成で高額商品が売れたとしても、需要の「先食い」にしかなりません。

 「エコ」「エコ」と環境対策を強調していますが、十分使える自動車や家電製品の買い替えを奨励することが「エコ」なのか。

「もったいない」

 首相や環境相がノーベル平和賞のマータイさんの訪日を受け、「もったいない」と口をそろえたのは数年前です。環境省は省エネ製品への買い替えで注意喚起しています。「製品の製造、使用、廃棄といったライフサイクル全体でみてみると、逆にCO2が増加してしまう可能性もある」―。

 「エコ」の粉飾をはがせば、トヨタやパナソニックをはじめ財界トップ企業への応援策にすぎない実態が浮き彫りになります。

 役に立たない補正予算につぎ込む巨額の税金が「もったいない」と同時に、膨らんだ赤字のツケを消費税増税で国民に押し付けるやり方は絶対に許せません。



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