2009年5月28日(木)「しんぶん赤旗」
底が割れた竹中氏の詭弁
雇用破壊が改革か
なんともお粗末な議論でした。どちらが、貧困と格差を広げた張本人なのかをめぐる応酬です。二十四日、テレビ朝日系サンデープロジェクトでの竹中平蔵氏(小泉内閣時代の経済財政担当相)と加藤紘一元自民党幹事長の議論です。
著書『劇場政治の誤算』で「小泉・竹中の失敗を検証」した加藤氏。番組では、小泉内閣時代に、非正規雇用が増大し、年収二百万円以下の給与所得者が一千万人を突破し、自殺者が高止まりしていることなどをあげて批判しました。
小泉「改革」で何が“解決”
これに竹中氏は、加藤氏は一九九〇年代に官房長官、自民党幹事長などを務め、「失われた十年」をつくった責任者の一人だとし、「小泉さんは、『失われた十年を解決し、終わらせた人。(『失われた十年』を)つくった人が、終わらせた人を批判するのはおかしい」と反論しました。
しかし、小泉内閣で“解決”したことといえば、バブルに踊った大手金融機関や大企業を公的資金、超低金利、減税などで救済・支援し、強引な不良債権早期最終処理をテコに、大企業が抱える「三つの過剰」(雇用、借金、設備)を解消したこと。大量の失業や企業倒産を招きました。
なかでも、滑稽(こっけい)だったのは、竹中氏も「解決しなければならない(問題)」と認める非正規雇用の増大をめぐる責任のなすりあいです。竹中氏は派遣労働者について、小泉内閣時代は18%ずつ増えたが、九〇年代後半には23%増えたとし、「加藤さんがやっていた時の方が増えている」と“反論”してみせました。労働者派遣については、一九九九年に日本共産党をのぞく政党の賛成で、「原則自由化」したことで急増。小泉内閣時代の二〇〇三年に自民、公明などの賛成で製造業にまで労働者派遣を「解禁」したことで、さらに事態を深刻化させ、いまの「派遣切り」問題を引き起こしています。
非正規の増大責任を認めず
竹中氏は、番組で、その責任を認めるどころか、非正規雇用が増えたのは「七九年の判例にとらわれて改革していないからだ」と居直りました。「七九年の判例」とは、整理解雇四要件((1)人員削減に十分な必要性がある(2)解雇を回避する努力義務を十分に尽くした(3)解雇対象者の選び方が公正・妥当である(4)説明・協議手続きを尽くしている)として確立されていくうえで、重要な判例となった東京高裁判決のこと。竹中氏はこれまでも、企業が正社員を雇いたがらないのは「(同判例で)企業の解雇権は著しく制約され、業績が悪化しても従業員を実態的に抱え続けねばならない」(「竹中平蔵のポリシー・スクール」二月一日付)からだと攻撃。正社員を含めた“解雇自由法”をつくれといわんばかりの主張をしてきました。こんな「改革」では、雇用を守るルールがいっそう破壊され、貧困と格差が拡大するだけです。
「改革をやめると期待成長率が止まる」「もっと改革しないといけない」という竹中氏。「改革」の中身は、大企業に都合のいい雇用「改革」だけではありません。最優先課題にあげ続けているのが、法人税率をもっと大幅に引き下げることです。竹中氏がかかげる「改革」とは、大企業のための「改革」を徹底しろということにすぎません。(渡辺 健)
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