2009年5月28日(木)「しんぶん赤旗」
「海賊」派兵法案 参院審議入り
「警察活動」を理由に
武器使用拡大 成り立たぬ
海外での新たな武器使用を認める「海賊対処」派兵新法案が二十七日、参院で審議入りしました。会期末が六月三日に迫る中での審議入りです。与党は、来週冒頭にも会期延長を強行して、何が何でも成立をはかろうという姿勢です。
政府・与党は、初めて海外で自衛隊による任務遂行上の武器使用を認めることについて、「海賊対処」は「警察活動」だから「(憲法九条の禁ずる)武力の行使に当たらない」と繰り返します。
しかし、一般に「軍事的活動」より実力行使の程度が低い「警察活動」を理由に、これまでのどんな海外での軍事的活動よりも「拡大された武器使用」が認められるという「論理」は成り立ちません。
一気に撃沈
使用できる武器の範囲には、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度において」(六条)という以外、「制限」はありません。派遣される自衛隊の護衛艦は、127ミリ砲、76ミリ速射砲、高性能20ミリ機関砲などのほか、対艦・対潜・対空ミサイルや魚雷なども搭載しています。「こうした艦載兵器は、『海賊船』への対処兵器にしては大掛かり(威力が過大)過ぎるもの…相手を一気に撃沈してしまう」(山田朗明治大学教授、『軍縮問題資料』五月号)という指摘もあります。
軍事的活動はもちろんのこと「警察活動」だとしても、自衛隊の海外での武器使用は、政府の憲法解釈のもとにおいても慎重に議論すべき問題です。「警察活動」というマジックワードのもとで、何の問題もないかのような議論は全く通用しません。
「海賊対処」は海上保安庁が行うべきだが、「海保保有の艦船では対応できないから自衛隊を出す」と「説明」されてきました。法案は、海上保安庁の海賊対処の権限が、自衛隊に「横滑り」(準用)する構造になっています。
しかし、「軍を出す、最高のレベルにあるものを出すことが非常に大きなこと」「これはひとつの国家のメッセージだ」(中谷元・元防衛庁長官、四月十五日)というように、議論は初めから「自衛隊を出す」という“結論”に立って進められています。
民主は追認
早期成立を目指す政府・与党に対し、民主党は代表質問で、国会の事前承認を盛り込むことなどで「修正」協議を提案。「迅速な海賊対処を可能とすることに十分留意」すると、協力姿勢を示しました。民主党の「修正」案は、自衛隊の派兵それ自体と武器使用の拡大を追認するものです。
イラク戦争とアフガン戦争での泥沼を前に、「紛争解決」に軍隊を安易に出すことへの反省と、武力では紛争問題の解決はできないという流れが世界で強まっています。インド洋沿岸諸国からも、さまざまな「理由」をあげて各国軍隊が競い合って展開することに懸念の声も出されています。
すでに法案の重大な問題点は明らかになっています。自衛隊の武器使用拡大で派兵恒久法に道を開く法案は、徹底審議のうえ廃案にするしかありません。(中祖寅一)
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