2009年5月27日(水)「しんぶん赤旗」
主張
月例経済報告
家計を犠牲にした「上方修正」
政府は二十五日に発表した五月の月例経済報告で、景気の基調判断を前月の「急速な悪化」から「悪化のテンポが緩やかになっている」と修正しました。上方修正は三年三カ月ぶりです。
理由は、企業の輸出と生産の急減にストップがかかり、「下げ止まり」つつあるということです。
外需・輸出頼みで
月例報告が指摘している輸出と生産の「下げ止まり」は、雇用と家計の犠牲の上に成り立っています。アメリカの消費バブルが崩壊し、膨らんだ製品在庫を大幅に圧縮するための減産のしわよせを、大企業は「派遣切り」「期間工切り」で労働者に押し付けました。減らしすぎた在庫を適正水準に戻す段階で、輸出と生産が増えてきているにすぎません。
大企業は雇用破壊の対象を正社員に広げています。月例報告も雇用について「急速に悪化しており、厳しい状況にある」とのべ、先行きも「一層の悪化が懸念される」としています。国民の暮らしから見れば、上方修正どころではありません。
政府は二〇〇四年一月の月例報告で「景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実に回復している」として以来、昨年七月まで「回復」の基調判断を続けました。大手製造業が正社員を非正規雇用に置き換え、労働者に犠牲を強いると同時に外需・輸出に頼って生産を伸ばし、五年連続で最高益を更新した時期です。
家計にはまったく実感のない「回復」でした。「ワーキングプア」が増大し、家計を犠牲にしているのだから当然と言えば当然です。ここに、戦後最長の「景気回復」と言われながら、景気を自律的な回復軌道に乗せることができなかった原因があります。
去年まで大企業は、過去最高の大もうけのために「偽装請負」など違法行為にも手を染め、徹底的に不安定雇用を利用してきました。今度はアメリカの消費バブル崩壊の打撃を弱めるために、巨額の内部留保を持っているにもかかわらず、労働者を平気で切り捨てています。
こんな身勝手を許していては、暮らしと経済を立て直し、安定させることは決してできません。
政府は外需・輸出頼みの成長路線を改め、内需主導への切り替えを本気で追求すべきです。麻生内閣も景気が急速に落ち込んだ昨年秋には、「内需主導の持続的成長が可能となるよう経済の体質転換を進めていく」(政府「生活対策」)と言っていました。しかし、大企業の在庫調整が進んだ四月の「経済危機対策」では、早くも「内需主導」を後退させ、「内需と輸出の双発エンジン」で成長をと変節しています。
家計を温める政策へ
今年度予算でも、「経済危機対策」でも、中心は大企業の応援です。大企業の雇用破壊をやめさせる手だてを取らず、社会保障の抑制路線は続け、医療・介護の崩壊に抜本的な対応を取ろうとしません。何より、家計・内需に大きな打撃を与える消費税増税を計画しています。
いま政府・与党がやっていることは、内需主導への切り替えを妨げ、輸出頼みのレールをさらに固めることであり、この道に未来はありません。暮らしを守り、家計を温める経済政策への転換こそ切実に求められています。