2009年5月24日(日)「しんぶん赤旗」
新型インフル対策
妊婦と家族は
川崎協同病院 産婦人科部長
佐藤育男医師に聞く
慢性疾患のある人や妊娠している女性は、新型インフルエンザに感染した場合、重症化する傾向があると考えられています。妊娠中の女性と家族が注意すべき点を、川崎協同病院産婦人科部長の佐藤育男医師に聞きました。 (寺田 可奈)
きちんと薬を使う
妊婦は免疫力が落ちていますので、インフルエンザにかかわらず、感染症全般にかかりやすい傾向があります。
薬の服用を嫌がる妊婦さんは多くいます。しかし、今回の新型インフルエンザに妊婦が感染した場合、タミフルやリレンザを使うべきだと考えます。新しい感染症で、だれも免疫を持っておらず、重症化した場合、命を落とすこともありえます。
妊婦への安全性が確立している薬は多く、ぜんそくや高血圧、糖尿病など慢性疾患のある人はとくに、きちんと薬を使って症状をコントロールすることが大切です。
免疫力を上げよう
また、免疫力を上げることが大切です。たばこ、深酒は、免疫力を低下させますので、妊婦は当然ですが家族も控えてください。ストレスや疲労の蓄積も免疫力を低下させます。
バランスのとれた食事、適度な運動も、免疫力を向上させます。外を歩く場合は人ごみを避けてください。
家族もうがい実践
家族がウイルスを持ち込むこともありえます。家族も、うがい、手洗い、人ごみに出る際のマスクなどを実践してください。働いている妊婦さんは、電車などがすいている時間帯の時差出勤をおすすめします。できれば家族も同様に。
赤ちゃんへの対応
生まれた赤ちゃんも気を付けなければいけません。乳児を人ごみに連れて行くことは危険です。授乳中のタミフル服用による乳児への影響は問題ないとされています。
発熱などの症状が出た場合、すぐに発熱相談センターまたはかかりつけの医師に、電話で相談してください。
産科婦人科学会 Q&A
日本産科婦人科学会は妊娠中、授乳中の女性の新型インフルエンザ感染に対する対応Q&Aをホームページで公表しました。その中から紹介します。
Q 妊娠している人が感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A 妊娠した女性が季節性インフルエンザに感染すると症状が重くなり肺炎などを引き起こすことがあります。重症化するとおなかの赤ちゃんにも悪影響が出ることがあります。新型インフルエンザに関してはまだデータが不十分ですが季節性インフルエンザと同様であると推定されています。
Q 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染を確認された場合の対応は?
A 米国では妊娠している女性に対して抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても同様の処置を勧めています。医師と相談の上、使用するかどうか決めてください。
Q 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応は?
A 米国では抗インフルエンザ薬の投与が勧められています。日本においても濃厚接触した妊婦に説明同意を得た上で、それらの予防投与が勧められています。
Q 抗インフルエンザ薬はおなかの赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。
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