2009年5月24日(日)「しんぶん赤旗」
主張
景気の落ち込み
雇用守る対策がいよいよ急務
政府の経済統計で、国内総生産(GDP)が昨年十―十二月期に続いて今年の一―三月期も記録的な落ち込みとなる一方、大企業を中心にした鉱工業生産は下げ止まりの傾向が出てきたなどといわれています。そうしたなかで、いっこうに回復を見せないのが雇用の指標です。「完全失業者」数は三月まで五カ月連続の増加で、「完全失業率」は5%に迫り、求職者に対する求人数の割合を示す「有効求人倍率」も下がり続けています。
非正規も正規も削減
雇用悪化の最大の原因は、大企業を中心に、非正規の労働者だけでなく正規の労働者に対しても、雇用破壊が続いていることです。
厚生労働省は、非正規労働者の「雇い止め」等の状況を毎月調査していますが、昨年十月から今年六月までに解雇を実施または予定しているのは、三月の調査では十九万五千六十一人、四月調査では二十万七千三百八十一人と増え続けています。しかも離職者七万三千二百五十人の調査で、再就職できたのは一万五千六百十七人、21・3%という深刻さです。
一方、同じ調査で正社員の離職状況を見ると、百人以上の離職を調査したというまったく不十分な中身でも、三月調査の一万二千五百二人が四月調査では一万八千三百十五人に増えています。文字通り「氷山の一角」ですが、雇用破壊が正社員に広がっていることはこれだけ見ても明らかです。
これまでの不況期なら、雇用の悪化は景気の悪化より遅れることが多いといわれました。ところが今回の経済危機では、大企業が率先して「派遣」など非正規の労働者を切り捨てたため、雇用の悪化がこれまでより早く現れました。
しかも今回の場合、大企業の生産などは下げ止まりが見られるといわれるようになっても、雇用の悪化にはいっこうに歯止めがかかりません。これまでの不況期でも、雇用の回復は景気の回復に遅れてあらわれるといわれました。今回の場合はそれに輪をかけて、落ち込みの始まりはこれまでより早く、下げ止まるのはさらに遅いといわれるほどです。
大企業が景気のよいときには急速に拡大した非正規の労働者を、内部留保があり株主には配当を続けながら削減しているのは、文字通り労働者をもの扱いする不当なものです。正社員の解雇も、残りたければ遠隔地への配置転換を受け入れろと迫るなど、不当な退職強要が相次いでいます。
日本共産党の仁比聡平議員が参院予算委員会で追及した、労働局の指導にも従わない東芝グループの違法な「派遣切り」や、パナソニックの関連企業が九州から関東や関西への転勤を計画し労働者をふるいわけして退職を迫っているなどはその際たるものです。さすがに舛添要一厚労相も、「企業は当然法律を守ってもらわねばならない」と答えざるを得ませんでした。
経済悪化との悪循環
大企業の不当な雇用破壊を放置していては、労働者の暮らしが守れないだけでなく、日本経済を再生させることも不可能です。雇用破壊で国内消費が落ち込み、二期連続の大幅低下となった一―三月期のGDPはその証明です。
国内需要を回復させ、日本経済を悪循環から立て直すためにも、大企業の雇用破壊をやめさせることが、いよいよ急務です。
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