2009年5月23日(土)「しんぶん赤旗」
イラン大統領選始まる
4候補 外交で対決 経済も焦点
【カイロ=松本眞志】イラン護憲評議会は二十日、大統領選挙の候補者四人を正式に承認しました。これによって六月十二日投票に向け、四年間のアハマディネジャド政権の内外政策を問う大統領選挙戦が事実上スタートしました。
イランは、憲法でシーア派イスラム教を国教とし、聖職者の最高指導者(ハメネイ師)が国政全般の決定権を有しています。大統領は行政権だけを有し、司法や軍への権限はありません。大統領候補を認定するのは聖職者などで構成される護憲評議会で、候補者選出にも枠がはめられています。
今回の選挙には厳格なイスラム的社会規範に忠実な保守派陣営からアハマディネジャド現大統領とレザイ元革命防衛隊司令官、言論の自由などを求める改革派に近い勢力からムサビ元首相、キャルビ元国会議長が立候補しています。
これまでに、対西側強硬路線を主張するハメネイ師がアハマディネジャド氏支持の構えを示したことから、同氏の再選が有力視されています。しかし同氏が核開発問題やイスラエルとの関係で西側世界との摩擦を強め、イランを安全保障の危機に追いやったとの指摘があるほか、高インフレ、経済成長の停滞を招いたことを厳しく批判する声もあります。
他の三人の候補者は一様に西側諸国との対話を重視すると公約しています。レザイ氏は、現政権の外交政策を「冒険主義」と呼び、「現大統領が再選されるならばこの国は(破滅の)ふちに引きずりこまれる」と強調しました。
ムサビ氏は、立候補を撤回したハタミ前大統領の支持を受け改革派の結束を呼びかけています。ハタミ政権時代の改革路線を引き継ぎ、西側諸国との関係修復を訴えています。
一方、オバマ米大統領が最近イランに対話を呼びかけたことも選挙にどう影響するかも注目されます。モッタキ外相は十九日、イランを訪問したイラクのゼバリ外相との共同会見で「(オバマ氏が)言動を実行に移すべきだ」としながらも、オバマ発言を「歓迎する」と表明しています。
イランの護憲評議会 最高指導者が任命するイスラム法学者六人と、司法府が提出した候補者の中から国会が選出した法律専門家六人の計十二人で構成。国会で通過した法案を憲法やイスラムの教義に照らして審議し、大統領や国会などすべての選挙の立候補者の資格審査を行います。メンバーは「保守派」が優勢。