2009年5月22日(金)「しんぶん赤旗」

薄い壁で仕切った2畳半の部屋

生活保護費を天引き

悪質“宿泊所”と交渉

「派遣村」実行委


 「年越し派遣村」実行委員会(湯浅誠村長)は二十一日、「春の相談村」(四月八―九日)で相談を受けた六十代男性とともに、生活保護費のほとんどを天引きしている千葉市内の「無料低額宿泊所」を訪れ、男性の所持品や印鑑、預金通帳と保護費の返還を求めました。


“同様施設1万5000床”

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(写真)宿泊施設を訪れた湯浅氏(右端)ら派遣村実行委員会=21日、千葉市稲毛区

 宿泊所は、F・I・S稲毛や特定非営利活動法人(NPO法人)厚銀舎などが運営。男性の生活保護費月額約十二万円のうち、施設使用料四万五千円、食費・運営費四万五千円、冷暖房費三千円を徴収していました。

 男性が入所したのは、風呂トイレ共同の薄い壁で仕切られた二畳半の部屋。炊事、掃除などは入所者自身で行っていたといいます。

 保護費は、事業者が管理する男性名義の千葉銀行口座に振り込まれ、入居費が天引きされていました。男性は預金通帳を見たことがなく、千葉銀行稲毛支店に問い合わせたところ、区役所から本人確認なしで口座開設するよう要請を受けていたことが明らかになりました。

 この日の返還請求で事業者は印鑑と現金二千三百円のみを返し、「あとは処分した」と説明しました。

 二〇〇六年十一月に東京都台東区で声をかけられ宿泊所に連れてこられたという男性は、「何もできない生活で苦痛だった。不満を言った人は、強制退去、生活保護廃止にされた。このままここで死ぬのかと思っていた」と述べました。

 湯浅氏は、「居住の貧困の問題です。同様の施設が一万五千床あると言われています」と「貧困ビジネス」の広がりを指摘。「適切な住居がなさすぎる」と、住宅保障を怠っている政治の責任を強調しました。

 派遣村名誉村長の宇都宮健児弁護士は、「生活保護費が本人に渡されない実態を知りながら、長期間続けていた行政の責任は大きい」と訴えました。

 派遣村実行委員会は、厚生労働省と千葉市に不適切な対応の是正を申し入れました。


 無料低額宿泊所 社会福祉法第二条第三項に定める第二種社会福祉事業で、第八号にある「生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる事業」とされている施設です。民間で運営する施設では、生活保護費の上限いっぱいまで利用料を徴収するところが多くあります。



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