2009年5月22日(金)「しんぶん赤旗」

主張

プルサーマル

無謀な計画は中止すべきだ


 中部、四国、九州の各電力会社の原子力発電所に、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混合したMOX燃料が相次いで運び込まれ、MOXを普通の原発(軽水炉)で燃やす、プルサーマル発電が動き出そうとしています。

 プルトニウムは猛毒で核兵器の材料にもなる危険な物質です。しかもそれを普通の原発で燃やすことには、制御が利きにくくなったり、長寿命の放射能が大量に発生したりする問題点が指摘されています。無謀なプルサーマルは、直ちに中止すべきです。

猛毒で危険な物質

 今回MOX燃料が運び込まれる原発のうち、九州電力は玄海原発の3号機に八月から燃料を入れ、十一月から日本国内初のプルサーマルを開始する予定です。四国電力は伊方原発の3号機に来年一月から、中部電力は浜岡原発の4号機に来年夏以降、それぞれMOX燃料を入れる予定です。

 原子力発電所で普通燃やされるウラン燃料には、ウラン235という燃えやすいウランは4%程度しか含まれていません。九割以上を占めるウラン238は燃えにくく、しかも発電中に中性子を吸収し、一部がプルトニウムという放射能が極めて強い、猛毒の物質に変わります。プルトニウムは核兵器の材料にもなるので、その管理は、国際的にきびしい規制の下に置かれています。

 使用済み核燃料に約1%含まれるプルトニウムを再処理で取り出しウランと混ぜ合わせたのが、プルトニウム・ウラン混合酸化物といわれるMOX燃料です。日本はこれまで、使用済み核燃料の再処理をイギリスやフランスに委託してきました。再処理によって取り出された大量のプルトニウムが貯蔵されており、国際的に大きな問題になっています。

 政府の核燃料サイクルでは高速増殖炉でプルトニウムを燃やすことにしていましたが、「もんじゅ」の事故で将来の見通しは立っていません。このため政府がつじつまあわせで推進しているのが普通の原発でMOX燃料を燃やすプルサーマルです。もともと普通の原発でMOX燃料を燃やすことは想定されておらずプルサーマルは原発の危険をさらに増大させます。

 日本では以前に東京電力と関西電力がMOX燃料を運び込んでいますが、イギリスで製造したMOX燃料はデータねつ造が発覚し、プルサーマルは中止に追い込まれました。東電が柏崎刈羽原発で予定したプルサーマルも、住民投票で反対が過半数を占め、実現していません。今回燃料が運び込まれた各地の原発でも、プルサーマルの中止や撤回を求める住民運動が高まっています。こうした反対を押し切って、見通しのない計画を強行すること自体、重大問題です。

原子力政策見直しを

 問題の根本には、プルトニウムの利用の見通しもたたないのに、使用済み核燃料の再処理を前提に、しゃにむに原子力発電を拡大してきた政府の政策があります。

 欧米の主要国のほとんども、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再利用するやり方を中止しています。プルサーマルは中止し、プルトニウムを再利用する原子力政策を根本的に転換し、原子力発電への依存をやめることこそ、いま求められます。


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