2009年5月21日(木)「しんぶん赤旗」

新型インフルで休所

障害者作業所が窮地に

施設は収入減/利用者の健康心配

大阪・高槻市


 新型インフルエンザで休所する社会福祉施設が、窮地に追い込まれています。その一つ、通りから子どもの姿が消えた大阪府高槻市の障害者通所施設・わかくさ障害者作業所を訪ねました。


 照明が消され、ひっそりとする各部屋を行ったり、来たりする男性利用者(21)が一人。黙々と部品作業をした後、イスに持たれて眠る女性利用者(47)が一人。

 休所でも初日十八日から「家では面倒見切れない」と家族から連絡が入っています。

 男性の父親(58)は「決まった通りに作業所に行かないと落ち着かなくなってしまう。そうなるとヤカンや炊飯器を投げ、みそ汁を投げ、暴れたり、自傷行為。目が離せない」と苦しい胸の内を明かします。

落ち着かない

 迎えに来た女性の母親は「夏休みは早くから言い聞かせて、何とかするが。今度のように急に休みと言われても、娘は休みというイメージができない。家にいても落ち着かないので、お寺参りや大型店などを連れ歩いている」と七十一歳の苦労を話します。

 職員は全員出勤で休所の対応に追われています。何より重視しているのは利用者と家族の健康を毎日聞き取り、相談を受けることです。

 認知症の父との二人暮らしの利用者、三カ所のショートステイをつないで夜を過ごす利用者…心配は尽きません。

 西山和幸わかくさ福祉会理事(54)は「障害が重いと医療機関にかかること自体が大変なことです。年一回の採血でも四人がかりでやっとできるくらいです。ですから入院もできません。感染はあってはならない」と緊張します。

 休所でグループホームの家の中に居ざるを得ない利用者について、藤原敦子みつばち作業所主任(42)は「仲間といるから楽しく過ごせる。自分ではゲームも遊ぶことも、お散歩に出ることもできないので、大きなダメージになっている」と話します。

見合う支援も

 厳しい財政運営を強いられる中で、同会でも職員をパート化し、八十人の半数がパートです。「一週間休めばパート職員は四分の一、収入が減るので、ふだんできない倉庫整理、記録作りなど無理やりの仕事づくりもせざるをえない」

 急な休所で百数十人分の食材を職員が買い取ることまでしています。その努力を自民、公明党が二〇〇五年に決めた障害者自立支援法が、かき消しています。

 同法以前なら「月単位の利用者数」が収入になるので、休所しても一円の減額もありえなかったのに、今は「一日単位の利用者数」なので、休んだ日まるごと、収入減となるのです。

 同作業所は一週間の休所で三百五十万円、他の作業所等を含め、わかくさ会全体になると、六百万円もの収入減となります。

 西山さんは「バザーをどんなにがんばっても二百万足らず。私らの力ではもう、どうにもならない。利用者の安心だけを求めているだけ。休所を行政が要請するなら、それに見合う支援も」と訴えます。(小林信治)



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