2009年5月21日(木)「しんぶん赤旗」
主張
1―3月GDP
「ルールなき資本主義」転換を
一―三月の国内総生産(GDP)は、前期(昨年十―十二月)と比べて実質4%(年率換算で15・2%)の減少となりました。
同時に、前期のGDPが3・2%(年率12・1%)減から3・8%(年率14・4%)減へ、大幅に下方修正されました。
過去最悪だった石油ショック後の七四年一―三月のマイナス3・4%(年率13・1%)を、二期連続で下回ったことになります。
消費の冷え込み一段と
前期と比べた今年一―三月のGDPの特徴は、国内需要の冷え込みの影響がいっそう広がっていることです。アメリカなど海外需要の急速な悪化を受け、輸出大企業が先を争って「派遣切り」「期間工切り」と呼ばれる「首切り」競争を繰り広げた結果です。
雇用者報酬(名目、季節調整)は前期のマイナス0・4%に対して、今年一―三月はマイナス0・7%に減少幅を拡大しました。年間に引き直した数字で見ると、前期より二兆円少なく、過去最高を記録した九七年七―九月と比べると十八兆円ものマイナスとなっています。家計消費は前期の0・8%減に対して1・1%減と、悪化の度を強めています。
こんな状況にもかかわらず、麻生内閣と与党からは楽観論が出ています。麻生太郎首相は二十日の参院予算委員会で、「鉱工業生産指数などは上向き」「(経済対策の)効果が少しずつではあるが確実に出始めている」とのべました。
月例経済報告で三年ぶりに景気判断を上方修正し、さらに景気の「下げ止まり」を宣言して総選挙を迎えるというシナリオです。狙いは、自民党と公明党が経済対策の効果を最大限にアピールすることにあります。
鉱工業生産の持ち直しは、輸出大企業がかつてないスピードで国内外の在庫を減らしたため、海外で在庫の不足感が出てきたことから起きている現象です。通常の在庫水準に戻す過程では、往々にして生産や輸出が強めに出ることがあります。従来型の輸出主導の一時的な「回復」にすぎません。
やはりと言うべきか、少し前まで「内需主導への転換」と言っていた麻生内閣が“のどもと過ぎれば”外需頼みに逆戻りです。審議中の補正予算案も財界言いなりで、輸出大企業に至れり尽くせりの大奉仕です。
貿易黒字国の輸出を支えてきたアメリカでは、住宅バブルの崩壊で家計が大きな打撃を受けています。家計が借金頼みで消費を膨らませ、経済を成長させるアメリカ流のやり方の転換が迫られています。アメリカの「消費バブル」が破裂した現実を直視し、本格的に内需主導への転換を図らなければ日本経済の将来は開けません。
内需主導の経済へ
ロイターの調査によると、大手製造業の四割が今年度、正社員の削減を計画しています。大企業の雇用破壊は、暮らしと経済を悪化させる悪循環の根源です。
巨額の内部留保の一部を取り崩させ、雇用破壊にストップをかけることは、当面の景気悪化を食い止める上でも、内需主導の経済に転換する上でも不可欠です。
「過労死」「サービス残業」「ワーキングプア」など、ヨーロッパでは考えられない事態だと海外メディアが注目しています。世界でも異常な「ルールなき資本主義」の改革は待ったなしです。