2009年5月20日(水)「しんぶん赤旗」
米政府の返書の公表にあたって
志位委員長の会見(質問に答えて)
日本共産党の志位和夫委員長が米政府の返書を公表した十九日の記者会見で、記者団の質問に答えた要旨は次の通りです。
返書の公表にいたる経過について
問い 返書を受け取ったのはいつですか?
志位 党本部に直接届いたのは十六日です。当初、返書を公表する記者会見を昨日(十八日)予定していましたが、公表の仕方について、米国大使館および米本国政府との調整が必要でしたので、今日になりました。こういう形で公表することは、先方の了解も得ているものです。
問い 書簡の返事が来ると思っていましたか?
志位 私の書簡は、私の提起にたいして先方に返事を求めてはいません。書簡を送ったのは、オバマ大統領のプラハでの発言を歓迎する立場から、ぜひこれが生きて国際政治を動かす力を発揮してほしい、そのためには何が大切かについて、私たちの考えと要請を先方に伝えたいという思いからのもので、それが伝われば十分だと考えていました。ただ、この間の米国大使館のこの問題に対する真剣な姿勢、態度など見ますと、何らかの対応があり得るかなとも考えていました。
問い アメリカから返事が来るというのは画期的なことではないですか? 日本共産党のこれからのアメリカ観を見直す可能性はありますか? 昨日から今日にかけて公表の仕方を調整する必要があったのですか?
志位 公表の仕方については、こういう返書が届いた際に、どういう形で公表するかについても、先方との合意のもとにすすめたほうが良いと考えました。公表の仕方は、概要を示すにとどめるなど、いろいろな方法もありますから。できるだけ双方の合意のもとにすすめたほうが良いだろうと考え、米国大使館と連絡を取り、大使館と米本国政府との連絡もあったようですが、結論として、返書そのものをこういう形で公表して結構ですという話でした。その手続きに若干の時間がかかったということです。
今回の書簡と党綱領の立場
志位 日本共産党とアメリカとの関係について言いますと、わが党にとっては、アメリカ政府から公式の形で返書が来たというのは、歴史上初めての出来事です。これまで核兵器廃絶を主題に、アメリカ大統領あてに書簡を何回かにわたって出したことがありますけれども、返書が来たのは今回が初めてです。
アメリカ社会が大きく変わりつつあるということを実感いたします。一言でいって、新しい大統領は「聞く耳」を持っている。すなわちアメリカに対するさまざまな意見、耳に痛いことも含めて「聞く耳」を持った大統領が生まれたということを感じています。大統領のプラハ演説を読んで、核兵器廃絶の問題では前向きな一致点が生まれたと感じました。私の書簡ではそれを歓迎するとともに、同意できない点も率直に書きました。この点では明らかな変化が起こっていることは事実ですから、それが実るような方向で、わが党としてあらゆる努力をしたいと思っています。
ただ、オバマ政権の外交路線の全体がどうなるかについては、全体についての評価を言うのはまだ早いと思っています。それから日米関係については、残念ながら、いまのところ変化が見られないというのが現状だと思います。在日米軍基地の問題、あるいは自衛隊の海外派兵の問題などについて、変化は見られません。何より日本政府の側が変化を求めていないことが問題ですが。これらの問題については、事実に即してよく見極め、言うべきことは言っていくことは当然です。
アメリカ社会の大きな変化ということを言いましたが、私たち日本共産党も、二〇〇四年に綱領を改定して、今日の世界では、一律に「独占資本主義国=帝国主義国」とは言えなくなってきているということを明らかにしました。帝国主義論の発展を綱領改定のときにいたしました。その国のとっている実際の行動を事実に基づいて見極めて判断するというふうに、綱領の理論的立場を発展させました。
アメリカについては、アメリカのとっている対外政策全体を具体的に分析して、綱領では帝国主義と規定をしています。しかしそのアメリカについても、アメリカがやることはすべて否定すべきものだと、あらかじめ先入観を持って見ることはしないということを、綱領改定のさいに明確にしました。いわば事実に即し、複眼で見るということです。アメリカの行動でも、世界の世論を反映して前向きな変化が起こったときには、それはそれとして私たちは評価をします。もちろんまずい点は率直に批判します。複眼で見て対応することを、綱領改定の際に明確にしたわけです。今回、オバマ大統領への書簡をあのような思い切った形で出せたのも、新しい綱領の立場にそくしたものだと言えると思います。
唯一の被爆国の政府にふさわしい行動を
問い 返書の中で、「日本政府との協力を望んでいる」とありますが、共産党の立場から現麻生政権にどんな働きかけをするのですか?
志位 たしかに米国政府の返書では、「日本政府との協力を望んでいます」という言い方をしています。私は、アメリカが一歩を踏み出した、「核兵器のない世界」に向けて、オバマ大統領が新しい踏み出しをやったわけですから、やはり唯一の被爆国の政府である日本政府こそ、核兵器廃絶という目標に向けて、それを主題とした国際交渉を行うというイニシアチブをとるべきだと思います。私が書簡で提起したような内容は、ほんらい麻生首相が提起してしかるべき内容ではないかと、私は考えています。そういう協力をこそ日本政府はやるべきだと思います。
日本共産党とアメリカとの新しい関係
問い 委員長が書簡を出したことで返書が来てキャッチボールが始まったことになると思いますが、共産党とアメリカとの今後の関係はどうなるのですか?
志位 今回のやりとりは、核兵器問題という人類の死活的課題の一点に問題を絞ったものですが、私の書簡を、駐日米国大使に会って公式に届け、大統領の指示で国務次官補が公式に米国政府を代表して返書を出したということですから、日本共産党という政党とアメリカ合衆国の政府という関係ですが、公式の話し合いのルートが開かれたということだと、私たちは理解しています。
私たちは、アメリカのとっている政策に対する批判点はたくさんあります。しかし、アメリカという国をもとより否定しているわけではありませんし、敵対を望んでいるわけでもありません。対等・平等の立場に立ったほんとうの友好の関係をアメリカと築きたいと願っているわけです。そういう展望にてらしても、どんな問題でも相互に自由に意見を交換する、互いに立場が違っても相互の立場を理解する、ということが直接できる関係になったというのは、非常に大きな意味をもっていると考えています。