2009年5月17日(日)「しんぶん赤旗」
主張
民主党代表選
国民の納得にはほど遠い
小沢一郎前代表の辞任を受けた民主党の代表選挙がおこなわれ、鳩山由紀夫氏が岡田克也氏を抑え、新しい代表に選ばれました。
鳩山氏は小沢代表のもとで幹事長を務めた、小沢執行部の中心人物で、小沢氏をかばい続けてきました。鳩山氏は出馬表明後、小沢氏の「傀儡(かいらい)にならない」などと言い訳してきましたが、その小沢氏を新執行部の中に処遇するとしています。これでは小沢氏と民主党に向けられた国民の批判がやむことはないでしょう。
党の責任問う小沢問題
小沢氏の代表辞任のもとになったのは、準大手ゼネコン「西松建設」から巨額の献金を受け取りながら長期にわたって隠し続けた事件です。小沢氏は辞任にあたっても「やましいところはない」と開き直りましたが、公設秘書の逮捕いらい、どの世論調査でも小沢氏の辞任を求める声が圧倒的多数を占めてきました。文字通り国民に追い詰められた結果です。
「西松建設」は十五日の株主総会に提出した報告で、小沢氏らへの献金が政治団体を隠れみのにした違法なものだったと認めました。小沢氏らに向けられた疑惑は、いよいよ決定的になりました。
小沢氏は、疑惑の解明を拒否したうえ、辞任に追い詰められても、今後も「最前線でたたかい続けたい」としています。そうした小沢氏の辞め方を認めた民主党自身の責任は重大です。
とりわけ鳩山氏は、幹事長としてみずから調査に乗り出すこともせず、「小沢氏はもっともクリーンな政治家」「(逮捕は)陰謀だ」などと露骨に擁護してきました。自浄努力をしなかったことを国民に説明する責任があります。
代表選を通じ、鳩山氏はもちろん岡田氏からも、「小沢氏は挙党体制になるために職を辞された」(鳩山氏)、「小沢さんが集めた金は自民党の派閥のトップに比べれば少ない」(岡田氏)などと、かばう発言はあっても、疑惑をただす発言はありませんでした。
鳩山氏は、その小沢氏に、自ら「一身をささげる」という「政権交代」で、「積極的な働きを期待したい」といいます。これでは鳩山氏と民主党がめざす「政権交代」が、自民党とまったく変わらない、小沢氏流の金権体質を温存することを浮き彫りにするだけです。
鳩山氏は、「企業・団体献金の禁止」をいいます。しかし実際に違法な献金を受け取った小沢氏の疑惑を正さないのでは、ただの“口約束”といわれても仕方がありません。
鳩山氏が衆院比例定数の削減を主張したことも見過ごせません。比例代表は民意を議席に反映する制度であり、その定数削減は議会制民主主義の破壊そのものです。
政治悪とは対決しない
鳩山氏は、改憲の本音は隠し、「友愛社会」の理念を掲げて、「税金を官僚の手から国民の手に取り戻す」などの政策を掲げました。特徴的なのは、その政策には「官僚批判」はあっても、大企業本位・アメリカいいなりといういまの「二つの政治悪」を根本から正す態度がないことです。
財界・大企業への大盤振る舞いを続け、アメリカいいなりのままでは、雇用と経済を立て直すという、直面する大問題も解決できません。このままでは自民党政治を変えてほしいと願う、国民の求めに応えられないのは明らかです。