2009年5月16日(土)「しんぶん赤旗」

原爆症認定 国が17連敗

大阪高裁 地裁判決を支持


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(写真)判決を受け、「国は直ちに解決せよ」と声をあげる支援者たち=15日、大阪高裁前

 原爆症認定申請を却下された京都、大阪、兵庫の被爆者十一人が、却下処分の取り消しを求めた原爆症認定近畿集団訴訟(第二次)の判決が十五日、大阪高裁でありました。永井ユタカ裁判長は、「新しい審査の方針」(昨年四月実施)でも認定されていなかった原告五人のうち四人の却下処分を取り消す大阪地裁判決(昨年七月)を支持し、国および厚生労働省の控訴を棄却しました。全国でたたかわれている原爆症認定訴訟で、国は十七連敗となりました。

 判決は「(国が原爆症認定に用いている、放射線量評価システムの)DS方式は、理論と実験による仮説であり、被爆者の実際の被爆事実を取り込んだものではないから、被爆線量の総量を推定する手法としては、経験的適合性あるいは総合性を確保したものであるとまではいえない」と指摘。厚労省が認定を拒む「体内異物(ガラス片残留)」「入市被爆者の心筋こうそく」「肝硬変(肝機能障害)」を原爆症と認めました。

 長崎県大村市で被爆者の看護にあたり救護被爆した女性(83)については、「被爆による急性症状の発生等が認められない」とし、原爆症と認めませんでしたが、「放射線の内部被爆または外部被爆をした可能性そのものは否定できない」と述べ、救護被爆者に原爆症認定の道を開きました。

 女性は記者会見で「当時、下痢やけん怠感はありましたが、自分の症状どころではなかった。国は原爆手帳を持っている人全部に謝り、何らかの補償をすべきだと思います」と話しました。

 藤原精吾弁護団長は「被爆者は自らをさらし、核兵器の非人道性を訴えている。国は六年にも及ぶこの集団訴訟の結果を真摯(しんし)に受け止めるべきだ」と語りました。

国は上告断念せよ

被爆者ら全面解決を要求

 原爆症認定集団訴訟の近畿二次・控訴審判決での原告勝利をうけて十五日、国会内で、被爆者や原告、支援者らが国の上告断念と訴訟の全面解決を求めて集会を開きました。

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳事務局長は、「この五月に全面解決をかちとっていかなければならない。座り込み行動などに全国の被爆者を動員し、全力をあげてたたかい抜く」と表明しました。

 東京の原告二人が「二十八日の東京高裁判決が待ち遠しい。二度と被爆者をつくらないで」「勝訴したがいまだに認定されていない」と訴えました。

 集会では、全面解決に向けた統一要求として(1)原告全員救済による訴訟の全面解決(勝訴原告の認定、敗訴・未認定の原告は被爆者救済の立場で対応)(2)司法判断に沿った認定基準の改定(肝機能障害と甲状腺機能低下症を積極認定に入れる、がんは幅広く認定する、原爆症かどうか判断の難しい疾病は「疑わしきは被爆者の利益に」の立場で臨む)を確認しました。

 各党議員が参加し、日本共産党から山下芳生、仁比聡平、井上哲士の各参院議員があいさつしました。

 国会内での記者会見で、全国原告団の山本英典団長は「六十七人の原告が亡くなっている。東京高裁判決までに上告を断念してほしい」と語りました。

 同日、日本被団協、全国原告団、弁護団は厚生労働省を訪れ、舛添要一厚労相あてに、訴訟の全面解決に向けた統一要求を申し入れました。対応した同省担当者は、大阪、東京両高裁判決をふまえて解決に向けた判断をおこなうとのべました。


原告団など声明

 原告団・弁護団、日本被団協が十五日発表した声明は、集団訴訟が一人ひとりの被爆者の「二度と核兵器を使ってはならない」との思いに支えられていると指摘。世界に核兵器廃絶への大きな流れが生じているいまこそ、政府は原爆被害者が世界人類に向けて発した訴えを被爆国・日本の声として世界に発信すべきだと訴えています。

 全国保険医団体連合会は同日、すべての被爆者の全面救済を求める、住江憲勇会長の談話を発表しました。



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