2009年5月16日(土)「しんぶん赤旗」
献金先・額 西松が決定
内部調査を公表
規正法改定契機にダミー団体を設立
準大手ゼネコン「西松建設」の石橋直社長は十五日、都内で記者会見し、違法献金事件などに関する同社の内部調査結果を公表しました。報告書から、巧妙な企業献金隠しの手口や意図が生々しく浮かび上がっています。
同社が公表した五十数ページにわたる調査報告書は、二つのダミー(隠れみの)政治団体「新政治問題研究会」「未来産業研究会」の献金が、西松からの企業献金そのものだったことを認めました。
民主党の小沢一郎代表や二階俊博経済産業相ら政治家側への献金総額は、本紙が指摘していた通り約四億八千万円だったこともあきらかにしました。
こうした献金について報告書は「政治団体がどの議員関係にいくら献金するかは、政治団体ではなく、当社が決定した」としています。
ダミー政治団体設立のきっかけは、一九九五年の政治資金規正法の改正でした。
「企業から政治家個人への献金が禁じられたことから、当社は、一九九五年八月下旬ころ、政治団体を設立した上、政治団体からの献金を装って政治家個人の政治団体等に献金することを画策した」。明らかな企業献金隠しでした。
同社は九五年に「新政治問題研究会」を設立。その後、「資金を分散し、目立たないようにしたい」という理由から九九年に「未来産業研究会」を設立しました。「新政治問題研究会」の設立の準備には、部長クラスの社員が選ばれ、推進役となりました。
両団体の収入源は、会員となった社員による「会費」や資金集めパーティーの収入でした。「会費」を払った社員には会社が「特別賞与」を払って、「会費」を補てん。パーティーについても「実際にはパーティーとしての実体は存在せず、当社の社員数名を呼び集め、簡単な昼食を取ったのみ」といったものでした。
両団体による政治資金の「原資は実質的に当社によって支払われたもの」として、その額は十一億円を超えています。
〇六年に両団体は「収支報告書がインターネットで公開されるようになり、情報公開が進むと、問題を追及される恐れがあると危機感」を抱いたことから、相次いで解散したとしています。
また、約十年前から、海外工事で約九億円の裏金をねん出。うち三億三千三百万円が国内に持ち込まれましたが、使途先は不明としています。
税務当局に対する使途秘匿金が〇八年度までの五年間で約二十六億円にのぼることも指摘しています。
解説
政治家も真相明らかにせよ
違法献金事件などについての西松建設の内部調査報告書は、政治家側に多額の献金をした政治団体が同社のダミー政治団体であったことを正式に認め、その手口の詳細を明らかにしました。
この事実は、献金を受領した民主党の小沢一郎代表や自民党の二階俊博経済産業相ら政治家側に鋭く突き刺さるものです。調査報告書は、ダミー政治団体設立が「政治団体からの献金を装って政治家個人の政治団体等に献金することを画策」したものであったと明記。そのために多くの社員を巻き込んで巧妙なカムフラージュをおこなっていたことも明かしています。
当然、その前提となるのは、提供先の政治家に同社の献金であることを伝えることです。そうでなければリスクを冒してまで違法献金をする意味がありません。
小沢代表や二階経産相は、「献金してくれた相手をいちいちせんさくしない」という趣旨の釈明を繰り返しています。しかし、一方の当事者である西松建設側が「政治家個人」に献金することが狙いであったと公式に認めた以上、この言い訳は通用しなくなります。
国民は、小沢氏や二階氏の説明にまったく納得していません。疑惑がいっそう深まるなか、政治家側も真相を明らかにすることが、強く求められています。 (森近茂樹)
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