2009年5月15日(金)「しんぶん赤旗」
主張
補正予算案衆院通過
有害無益な大盤振る舞い
自民党と公明党が二〇〇九年度の補正予算案の衆院採決を強行しました。十四兆円に上る補正予算案は、大企業には大型公共事業と減税で大盤振る舞いする一方、国民向けの対策は一時的なばらまきの寄せ集めにすぎません。
新たに十兆円の国債を発行することを受けて、自公政府は消費税増税を盛り込んだ「中期プログラム」を六月に改定します。赤字を消費税で穴埋めする算段です。麻生太郎首相は財政責任を強調していますが、大企業奉仕の請求書を国民に押し付ける無責任なツケ回しにほかなりません。
大企業・ゼネコン奉仕
補正予算案は、道路・港湾や官庁施設費など公共事業費と、特殊法人への出資金を合わせた投資部門で七・五兆円を積み増します。当初予算と比べると補正後は94・4%増、ほぼ倍加です。
三年前に小泉内閣が「白紙だ」と明言した高速道路の追加整備を復活させ、事業費一・三兆円の東京外環道など四路線の着工費を盛り込みました。東京外環道は大手ゼネコンがおぜん立てした露骨なゼネコン奉仕の巨大事業です。
補正予算の関連法案に盛り込まれた研究開発減税の拡充で恩恵を受ける企業は、過去の適用の実績から見て、九割以上が資本金十億円以上の大企業です。
投資部門の倍増に対して、社会保障関係費は三・四兆円、補正後の規模は当初予算の13・7%増にとどまります。しかも、雇用保険を受給していない人への職業訓練期間の生活保障は三年限り、子育て手当も一回きりです。
高齢者差別の後期高齢者医療制度、重い負担増の矛盾が噴出している障害者自立支援法や介護保険は廃止を含む制度の抜本見直しが必要です。何より社会保障の抑制路線そのものをやめるべきです。しかし、麻生内閣と自公は一時しのぎに終始し、補正でもその場限りの予算を計上するだけです。
麻生首相は「母子家庭の所得が低いことには問題意識を持っており、どうにかしなければいけない」とのべています。それなら、四月一日から全廃を強行した生活保護の母子加算を復活させることです。そのために必要な財源は二百億円、補正予算案の七百分の一を回すだけで足りる規模です。三百二十億円の政党助成金をやめれば、将来まで余裕で続けられます。
軸足を家計に移して
与謝野馨財務・金融・経済財政相は「補正予算が実際に使われるようになったときの社会的なインパクトの大きさは相当なものだ」と自慢します。政府はGDP(国内総生産)を1・9%押し上げる効果があるとしています。
巨額をつぎ込めば「インパクト」が出るのは当然ですが、「日経」系の日本経済研究センターは1・9%の半分の1%程度の効果しかないと分析しています。
一時的な「インパクト」が過ぎた後は反動が襲います。すでに与党が次の経済対策を検討しているように、効果のない財政出動を重ねて赤字を膨張させた一九九〇年代と同様、際限のない浪費を繰り返す危険があります。
ますます暮らしが苦しくなった後に待っているのは消費税の増税です。こんなやり方はまったく有害無益です。大企業応援から家計に軸足を移す経済政策の根本転換こそが求められます。
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