2009年5月13日(水)「しんぶん赤旗」

いすゞ期間工切り「違法」

宇都宮地裁支部仮処分

中途解雇通告・賃金カツト

差額支払い命令


 いすゞ自動車栃木工場(栃木県大平町)の元期間社員三人が、同社を相手取り、「非正規切り」で行われた賃金カットの支払いを求めていた仮処分裁判で宇都宮地裁栃木支部(橋本英史裁判官)は十二日、いすゞの違法行為を認定し、労働者側の訴えを全面的に認める決定を出しました。


 申し立てていたのはJMIU(全日本金属情報機器労働組合)いすゞ自動車支部の松本浩利執行委員長と同支部組合員二人。

 同社は期間社員ら千四百人を昨年十二月二十六日付で期間途中で解雇すると通告。世論と運動に押されて期間社員について解雇を撤回したものの、代わりに希望退職を募集し、応じない場合は休業扱いとし賃金を60%にカットしました。松本さんらは不当だとして、差額賃金の支払いを求めていました。

 決定は、期間途中の解雇について「労働契約法十七条一項によって原則として禁止され、使用者側に期間労働者に対する雇用保証が厳格に課せられており、期間労働者の保護が図られている」と不当性を指摘しました。

 休業命令についても「期間の定めのない労働者に対する場合と比べて、より高度なものを要する」と不当性を認め、期間社員の差額賃金請求権は消滅したとするいすゞの主張を「正義・公平の理念に違反し、条理にも反する」と却下。総額約八十万円の差額賃金の支払いを命じました。

 記者会見した松本委員長は「決定を素直に喜んでいる。労働組合を結成し、多くの仲間の支援を得てたたかった成果だ。正社員化を求めた東京地裁での勝利に全力をあげたい」とのべました。

 鷲見賢一郎弁護士は「賃金カットや解雇予告の違法性を認めたもので完全勝利だ。全国でたたかう仲間を勇気づける決定だ」と語りました。


解説

大企業を初の断罪

 「非正規切り」の端緒となった、いすゞ自動車に対する宇都宮地裁栃木支部の決定で、大企業による「非正規切り」が初めて断罪されました。減産減益を口実にした「非正規切り」がいかに無法・不当なものかを示すもので、大企業の横暴とたたかう各地の労働者を励ますものです。

 大企業は巨額の内部留保や株主配当には手も付けず、法律が禁じる契約中途の解雇でも平然と強行してきました。その多くは、偽装請負や契約更新を重ねており、解雇どころか正社員にしなければならないものでした。

 これに泣き寝入りせず、労働組合に入って立ち上がった労働者のたたかいにこそ、社会的大義と道理があることを裏付けています。

 大企業は非正規切りにとどまらず正社員も含めた雇用や賃金の破壊をすすめていますが、直ちに撤回すべきです。雇用も賃金も守ることで労働者・国民の生活を支え、「内需拡大による景気回復」という社会的責任を果たすことこそ求められます。(深山直人)



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