2009年5月12日(火)「しんぶん赤旗」
小沢氏辞意
党略を優先 疑惑にふた
自浄努力放棄した民主党
「党内が乱れていたのでは総選挙に勝利することはできない」「自ら身を引くことで民主党の団結を強め、挙党一致をより強固なものにしたい」。民主党の小沢一郎代表が十一日の記者会見であげた代表辞任の理由です。
報道各社の世論調査で六、七割もの国民が「説明責任を果たしていない」とみている小沢氏自身の西松建設の違法献金事件についての説明は一切ありません。それどころか、「私には一点のやましいところはない。私は、政治的責任で身を引くわけではない」と開き直りました。代表辞任で疑惑にふたをする露骨な姿勢です。
逮捕2カ月
西松事件で小沢氏の公設秘書が逮捕されてから二カ月。その間、一ミリたりとも疑惑の解明はされていません。
西松建設がダミー(隠れみの)の政治団体を使って巨額の献金をしたことを小沢氏側が知っていたか、共同でやったかは疑惑の核心です。
ところが、小沢氏は西松の違法献金について「企業献金という認識にたっていれば政党支部で受領すれば何の問題もない」とはぐらかし、「政治団体のお金がどのような形で集められたのか、せんさくすることはない」と、資金の出所をまったく明らかにしようとしませんでした。こうした態度こそが疑惑にふたをし、国民には「説明責任を果たしていない」と映ったのです。
疑惑隠しは小沢氏を党首にかついできた民主党も同じです。公設秘書の起訴(三月二十四日)を受けての党幹部会などでは「潔白」と主張する小沢氏の代表続投を了承。小沢氏の疑惑を、単なる政治資金収支報告書の記載ミスとして片付け、党としての自浄努力を放棄してきました。民主党は学識者による第三者委員会なるものを設置しましたが、そこでの議論は解明ではなく疑惑報道のあり方や小沢氏の説明責任がどうだったのかというものにすぎませんでした。
審議に弱さ
疑惑を明らかにしない小沢民主党の弱さは、国会審議にもあらわれました。自民党も二階俊博経済産業相ら多数の政治家が「西松マネー」を受け取っているため、自民、民主双方とも西松問題はとりあげず、「西松問題だんまり国会」となりました。また、政府・与党への“抵抗”もなくなり、民主党は審議が尽くされていないにもかかわらず、二〇〇九年度予算や沖縄米海兵隊のグアム「移転」協定などで与党の採決日程を次々認める立場をとったのです。マスメディアも「2大政党の両方に『政治とカネ』の問題が生じた場合、国会が機能しなくなる危うさを示した」(「毎日」三月十五日付)と指摘しました。
自公も同じ
疑惑を隠し続けているのは麻生自公政権も同じです。麻生太郎首相は自らの閣僚にも疑惑が及んでいるのに、「二階大臣はちゃんと説明している」などといって調査さえしようとしません。
民主党は小沢氏の後任選びに走り出していますが、政党としての自浄努力を放棄したまま、いくら党首の首をすげかえても同じです。(高柳幸雄)
西松違法献金 小沢代表巡る経緯
3月
3日 東京地検特捜部が小沢氏の公設第一秘書の大久保隆規容疑者を逮捕。
4日 小沢氏が記者会見で「献金は適正に処理し、報告している。何らやましい点はない」と違法性はないことを強調。「どこからもってきた金だとか、そういうたぐいの詮索(せんさく)はしない」「もし西松建設そのものからの企業献金との認識に立っているとすれば、受けることが許されている政党支部で処理すれば何の問題も起きなかった」と企業献金を受け取るのは当然との考えを表明。鳩山由紀夫民主党幹事長は「小沢代表としては十分に説明責任を果たした」と発言。
6日 日本共産党の小池晃政策委員長が参院予算委員会で、西松建設の違法献金事件をめぐり、自民・民主両党の責任を追及。
17日 小沢氏が記者会見で、企業・団体献金の禁止について「公共事業ということでは仕分けはできない」「もしやるとすれば、企業献金、団体献金の禁止を徹底しなければ意味がない」と発言。
24日 東京地検特捜部が、政治資金規正法違反の罪で、小沢氏の公設第一秘書の大久保容疑者を起訴。小沢氏は会見で「この種の問題で逮捕、強制捜査、起訴という事例は記憶にない。そういう意味で私としては、合点、納得がいかない」と述べ、民主党代表続投を表明。同党役員会、常任幹事会も了承。
27日 小沢氏が同党の参院議員総会と衆院代議士会に出席し、代表にとどまる決断をした経緯を説明。民主党議員は拍手で続投を確認。
30日 日本共産党が、西松建設違法献金事件の参考人招致と集中審議を衆参両予算委員会で行うよう各党に申し入れ。
4月
3日 民主党が「政治・検察・報道のあり方に関する有識者会議」を設置。
21日 小沢氏が会見で、自らの進退について「民主党の組織としての総意はもう決まり切っている。私は代表として総選挙に向けてみんなと一緒に全力で取り組む」と発言。
29日 小沢氏が都内で開かれた連合メーデーで「何としてでも総選挙に勝利し、政権交代を実現する。自分自身の身の果てるまで、あらゆる障害を乗りこえて使命を達成することをお誓いする」と発言。