2009年5月10日(日)「しんぶん赤旗」
新型インフル
感染者 容体落ち着く
同乗の49人は足止め
メキシコでの大規模感染が表面化してから約二週間。新型インフルエンザが世界へ広がる中、日本でも九日、国内初の感染に衝撃が走りました。政府は、水際対策を中心とした対処方針を変更しないとしていますが、専門家からは国内感染の拡大を前提とした医療態勢の強化を求める声が広がっています。
|
成田空港で新型インフルエンザの感染が確認された三人は成田市の成田赤十字病院に搬送され、一般病棟と隔離された感染病棟で治療を受けました。同病院の鈴木隆事務部長(60)は報道陣に「容体は落ち着いている」と話しました。
同病院によると、三人が入院した病棟は感染の広がりを防ぐため、気圧を低く設定。医師一人、看護師三人のチームが二交代で治療に当たりました。
鈴木部長は「今までの準備に基づき万全の態勢を取っていく。混乱はなく、他の患者、地域住民の安全に問題はない」と語りました。
カナダに同行したほかの三十三人と、同じ便で近くに乗り合わせた乗客ら十六人の計四十九人は空港内の宿泊施設に留め置かれ一夜を明かしました。
解説
医療態勢の整備は急務
厚生労働省は、検疫強化を中心とした現在の対策を継続する考えですが、今回の事態を受けて、国内での人から人への感染拡大に備えた医療態勢の整備が緊急課題となってきたといえます。
今回の感染では、現在の検疫対策の限界を浮き彫りにしました。
成田空港で感染が確定した患者の一人は、機内検疫をすり抜け、機内から出た空港内で体調不良を訴えて感染が分かりました。
そのため、この患者と濃厚に接触していた人たちの「停留」はできませんでした。厚労省によると、この患者の周囲に座っていた最大十一人の乗客がすでに入国した可能性があるといいます。
さらに、同省が自治体に「健康監視」を依頼した同乗者は、百五十人を超えています。
現在、機内検疫が行われているのは成田空港など四空港だけで、対象も米国、カナダ、メキシコからの便だけ。
英国、ドイツなどの便は行われず、韓国からも週五百便以上あるのに機内検疫はおこなわれていません。
今回の事態を受け、厚労省も九日の会見で「症状が短時間に変わるインフルエンザを、機内検疫ですべて発見するのは限界がある」と認めています。
今後、国内での感染拡大を前提とした医療態勢の整備とともに、国内での新型インフルエンザの疑いのある症例の早期発見を可能にする調査体制の整備も、必要になっています。 (宇野龍彦)
|
■関連キーワード