2009年5月10日(日)「しんぶん赤旗」
裁判員制度
国会審議から課題浮き彫り
守秘義務に懸念相次ぐ
冤罪救済の妨げに/取り調べ可視化を
二十一日から始まる裁判員制度について、衆・参法務委員会で集中審議がされるなど、さまざまな議論が行われています。審議から浮き彫りになった課題は何か―。
裁判員に選ばれた人には、評議の経過などを家族にも一生漏らしてはいけないという厳しい守秘義務が課せられます。違反すると、六カ月以下の懲役または五十万円以下の罰金が科せられます。
参院法務委員会の参考人質疑(四月九日)では、守秘義務への懸念が共通して出されました。
国学院大学の四宮啓教授(弁護士)は「アメリカの陪審員は守秘義務が一切ない」「守秘義務を解除してでも、制度のよりよい定着のために国民の声を聞くという方向を考えていただきたい」と発言。
竹田昌弘共同通信編集委員は「裁判の公正や信頼を確保するために、議論の経過も聞いた方が、有権者は信頼するのではないか」と述べました。
日本共産党の仁比聡平参院議員は守秘義務について、「(多数決で死刑判決になった場合など)良心を傷つけられたまま家族や友人に話すこともできないのでは、精神的なケアもできない。生涯、刑罰をもって口外を禁止するのは過酷極まりない。裁判員制度は国民の良心を信頼し成り立つ制度だ。処罰規定は削除すべきだ」(三月三十日の参院法務委員会)と強調しています。
裁判員制度開始に伴い、刑事訴訟法が改定され、検察側が開示した証拠のコピーの目的外使用が禁止されたことも問題になっています。冤罪(えんざい)の救済が困難になるという指摘があります。
四月九日の参院法務委の参考人質疑で、仁比氏は「重大事件において、裁判上の証拠をメディアなどが入手し、批判的に分析することで、冤罪からの救済が図られることがある」と指摘。竹田氏は「なんとかしてほしい条文だ。冤罪を指摘する活動は、立件対象にならないようにしてほしい」と答えました。
裁判員制度開始が目前に迫っていますが、公正な裁判のための制度的保障は不十分なままです。とくに警察などでの取り調べ全過程の録音・録画や、検察官が収集した証拠を弁護人に全面開示することが不可欠です。
録音・録画を義務化する「可視化法案」(民主党提出)が、四月二十四日の参院本会議で、日本共産党、民主党、社民党の賛成多数で可決し、衆院に送付されました。刑事司法に対する国民的監視が求められます。 (小林拓也)
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