2009年5月10日(日)「しんぶん赤旗」
主張
新型インフル拡大
警戒と備えをいっそう強めて
新型インフルエンザの感染者が世界で三千人を突破し、日本でもはじめて、カナダから帰国した高校生ら三人の感染が確認されました。世界保健機関(WHO)では、世界的大流行を意味する「フェーズ6」の段階と認めるかどうかの検討が続いています。
日本国内で確認された患者は滞在先のカナダで感染した可能性が高く、国内で発生した患者にはあたりません。しかし、世界的な感染拡大から、国内で感染が広がることも避けられない状況です。冷静に対応しつつ、警戒をいっそう強めることが重要です。
毒性弱くても軽視しない
新型インフルエンザへの感染者は、週末までに世界の三十近くの国と地域で合計三千四百人を超しています。メキシコやアメリカに加え、カナダでも死者が出ました。まさに世界的大流行といってもおかしくない状態に近づいています。メキシコやアメリカだけでなくイギリスやスペインなどヨーロッパの国ぐにでも人から人への感染が広がっていると確認されれば、WHOは「フェーズ6」に入ったと宣言する見込みです。
新型インフルエンザは豚のインフルエンザが原因でしたが、いまでは豚と直接接触がない人からも感染者が相次いでいます。豚から人へ、人から人へ、さらにまた人から豚へと感染は広がります。感染を繰り返す間に毒性が強まることもあるのが、インフルエンザウイルスの特徴です。流行が続いている間は、警戒を怠ることができません。
今回の新型インフルエンザ(H1N1型)は、鳥インフルエンザが原因となっておきるもの(H5N1型)より毒性は弱く、感染してもほとんどは軽い症状ですんでいます。しかし、普通のインフルエンザなら感染者が少ないといわれる若い世代の感染者が多く、症状が重い人も出ているという報告もあります。治療が遅れ重症化したと見られるケースもあります。
人の移動が完全には止められない以上、人から人へと感染するようになった新型インフルエンザが広がるのを抑えるのは、簡単ではありません。しかも、毎年季節的に発生するインフルエンザとは違い、新型インフルエンザの場合は、基本的にウイルスに対して免疫を持つ人はいません。
どんなに毒性が弱くても、感染し発症すれば発熱や下痢などの症状が出ます。感染拡大を防ぐために入院・隔離したり、学校や仕事を休んだりしなければならないことにもなります。こんどの新型インフルエンザは症状が軽いそうだと軽視せず、警戒と備えを怠らないことが重要です。
水際とともに感染対策を
日本はこれまで新型インフルエンザが発生した国からの入国・帰国者への検疫など、水際対策を強めてきました。しかし世界的に感染が広がる中で、国内で感染者が出た場合の対策も重要だと専門家は指摘します。手洗いやうがい、マスクなど日常の予防対策はもちろん、感染者への治療や感染拡大を防ぐ体制を整えることです。
インフルエンザは寒くて乾燥した時期に広がりやすい病気です。南半球ではこれから本格的な冬です。日本など北半球でも、冬までに流行が収まらなければ一気に広がることもあります。そうした事態にも備えた対策が不可欠です。
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