2009年5月9日(土)「しんぶん赤旗」

主張

米軍艦の民間港入港

自治体の拒否する権限侵すな


 米軍艦の民間港入港が増加していることに自治体・住民の不安と怒りが広がっています。

 二〇〇六年、〇七年は過去最高の二十八回、〇八年もそれに次ぐ二十四回の入港でした。今年も北海道・小樽港、鹿児島港などに相次ぎ入港しています。主な港に米軍艦がほとんど入港する状況がつくられつつあります。しかも入港の許可権をもつ港湾管理者(自治体首長)の意向を無視した入港も目立ちます。多くの港湾管理者が自粛を求めているのに、「友好・親善」を口実に米艦が入港を強行し、軍事利用を常態化しているのは許されないことです。

目に余る米軍の横暴

 米海軍の掃海艦二隻が先月沖縄・石垣港への入港を強行しました。同港への入港は一九七二年の沖縄の本土復帰後初めてです。

 同港の管理者である大濵長照石垣市長は、民間船舶の利用で日常的にごったがえす現状を説明して「受け入れ困難」と米艦入港を断り続けました。港湾法にもとづく港湾管理者の権限の行使です。港湾管理者が拒否しているのに、入港を強行したのは重大です。

 石垣市は、「非核平和都市宣言」(一九八五年)に続いて、「平和港湾宣言」(九九年)を行っています。「悲惨を極めた沖縄戦や戦争マラリアの悲劇を絶対に繰り返させてはならない」という切実な思いをあらわしています。米軍は「平和港湾」をめざす住民のその願いさえふみにじったのです。県民の痛みの「軽減」どころか、増大させているのが実態です。

 見過ごせないのは、米軍艦の入港には、米軍が民間港湾と民間空港を戦争のさいにいつでも自由に使用できるようにしておく狙いがあることです。二〇〇五年十月の米軍再編報告がその狙いを明記しています。

 日米軍事同盟強化のために「平時からとり得る不可欠な措置」として、「空港及び港湾を含む日本の施設」を「緊急時に使用」することをうたっており、そのための「詳細な調査」まで確認し合っています。港湾管理者の反対を無視して石垣港に強行入港したのは、「詳細な調査」や軍事利用への地ならしが目的です。

 米軍が入港を強行するのを許す日本政府の態度も問題です。政府は、米軍地位協定の「入港料を課されないで日本国の港に出入りすることができる」との規定を理由に、出入りを認めることが義務であるかのようにいっています。

 しかし、この規定は入港料を課されないといっているにすぎません。米軍艦が自由勝手に出入りできるというなら基地と同じです。解釈の拡大は問題です。

港湾の平和利用こそ

 港湾法は、入港する船舶に港湾管理者の許可を受けることを義務付けています。民間港なら米軍も同じです。政府は、「周辺事態においても、通常と同様、地方公共団体の長(港湾管理者)の許可を得る必要がある」(二〇〇〇年七月「周辺事態法九条の解説」)といってきました。港湾管理者の反対を無視して、入港する米軍の不法性は明確です。

 日米両政府は、民間港を米軍の戦争に使うための米軍艦の入港強行をやめるべきです。

 平和であるべき民間港や民間空港を戦争の拠点にさせるわけにはいきません。



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