2009年5月8日(金)「しんぶん赤旗」
主張
「安心社会」
自公政治の抜本転換が必要だ
麻生太郎首相は「経済危機対策」について、「生活者の安心」と「雇用や社会保障、子育て支援」に力を入れたと強調しています。
新設した「安心社会実現会議」(首相、官房長官、経済財政相と有識者で構成)では、「安心社会の国家ビジョン」を取りまとめるとしています。経済財政諮問会議でも集中審議を開き、六月の「骨太方針2009」に「安心」プランを盛り込み、税制の「中期プログラム」を改定する方針です。
「雨漏りのバケツ」
経済危機対策の中心は社会保障ではなく公共事業です。補正予算で発行する国債十・八兆円の七割を占める建設国債を財源に大型道路・港湾、官庁営繕など公共事業費四・七兆円、特殊法人への出資金二・八兆円を計上しています。
一方で補正予算に盛り込んだ障害者自立支援、高齢者医療、年金記録問題の経費は合計で二千三百億円です。再就職支援や地域医療・子育て対策を加えても三兆円あまりです。しかも、これらは「一時的なもの」(与謝野馨財務・金融・経済財政相)であり、「雨漏りのバケツ」(経済財政諮問会議の民間メンバー)にすぎません。
「行き過ぎた市場主義などによって社会全体の信頼のシステムが崩壊して、国民は先の見えない不安感、閉塞(へいそく)感に陥っている」。安心社会実現会議では、こんな意見も出ています。
しかし、その後に開いた経済財政諮問会議は、輸出大企業の「活力」を優先した「構造改革」の「考え方はどこも間違っていない」とクギを刺しました。これでは反省は望むべくもありません。
四月二十二日の諮問会議では「安心社会」の基本方針として「安心と活力」の「両立」を確認しました。構造改革の「活力」政策とは、不安定雇用を増やし、社会保障・税金の国民負担増で財源をつくって輸出大企業を応援するやり方です。家計・内需を犠牲にした「活力」政策こそ「安心」を壊した元凶です。それを「両立」させるという基本方針は「安心社会」の看板倒れを予言しています。
実際に与謝野財務相は、社会保障の抑制路線を明記した「骨太2006」に沿ってやっていくと、再三にわたって表明しています。
自公政治の下で国民の不安は大きく膨らんでいます。内閣府の調査でも不安を感じている人は七割を超え、過去最悪です。不安の内容は「老後の生活設計」が最も多く、健康や収入への不安が上位を占めます。
社会保障と雇用は、財界言いなりの自公政府が一番痛めつけてきた分野です。労働者派遣の自由化、将来にわたり負担を増やし給付を減らす年金改悪、高齢者の怒りを買っている後期高齢者医療制度の創設―。ここ十年を見ても制度の根本からの改悪が続きました。自公政府は予算面でも、社会保障の自然増を毎年二千二百億円カットする抑制路線を敷きました。
消費税増税への不安
不安をなくし安心社会を実現すると言うなら、大企業優先の従来のやり方を反省し、雇用を守り社会保障を拡充する政策に抜本転換することがどうしても必要です。
何より、大企業向けの新たな減税財源を含む財政のツケを、すべて消費税増税で庶民に回す計画は、新たな不安の大きな火種です。消費税の増税計画もまた、「安心」とは決して両立しません。