2009年5月2日(土)「しんぶん赤旗」

主張

新型インフル

国内の感染拡大に万全の策を


 アメリカ、カナダなど新型インフルエンザが広がっている地域から帰国した人たちに、感染が疑われるケースが相次いでいます。その後、疑いが晴れた人もいますが、すでに世界保健機関(WHO)は世界的大流行一歩手前の「フェーズ5」に達したと発表しています。日本国内に感染が広がることは十分予想されます。検疫など水際対策に加え、国内での感染拡大に万全の対策が急がれます。

検疫だけでは防げない

 これまでのところ、感染が疑われたのはいずれも新型インフルエンザの発生地からの帰国者です。飛行機を降りる前の機内での検疫に万全を期すなど、感染を水際で防止する対策の徹底がまず求められているのは明らかです。実際には検疫にあたる職員が足りず、機内検疫や質問表の回収が十分おこなえなかったなどのケースが相次いでいます。関係者などの協力も得て、検疫体制を強化することは急務中の急務です。

 インフルエンザの特徴は三八度以上の高熱が出ることですが、感染してわずかしかたたない潜伏期などの場合は、検疫の際に発見できないこともあります。そうした場合は自覚がないまま外へ出、日常生活を通じて国内感染が一気に広がることもあり得ます。また、万一新型インフルエンザを発症しても自覚がなければ医者にかからなかったり、逆に普通に病院で受診して、感染を広げることにもなりかねません。

 こうした事態を防ぐには、新型インフルエンザの発生地からの帰国者など、感染の可能性がある人を追跡できる体制を整えることも重要です。同時に、何よりもまず国民に新型インフルエンザについての知識を持ってもらい、外出の際のマスクや、うがい、手洗いなど日常的な感染防止の対策への自覚を促すことが不可欠です。

 発熱やせきなど感染した可能性がある人は、直接医療機関を受診せず、まず電話で相談するなどというのは初歩中の初歩ですが、一体どこに電話すればいいのかさえ、周知徹底されているとはいえません。厚生労働省のホームページには都道府県の新型インフルエンザ相談窓口の一覧表がありますが、せいぜい一県に一カ所程度ではとても十分とはいえません。

 地域の医療に責任を負う保健所が大幅に減らされてきた責任は重大です。電話での相談窓口や新型インフルエンザの患者を最初に診断する「発熱外来」などを早急に整備し、国内での感染が本格化する前に政府や自治体が国民に十分知らせておくことが急務です。

 政府の行動計画では、国内で感染が発生したときには患者の指定医療機関への入院とあわせ、学校の休校や不要不急の集会の自粛要請などをおこないます。さらに感染者が拡大した場合は、ワクチンの接種など対策が強化されます。

長期にわたる事態に備え

 重要なのは、今回の新型インフルエンザの毒性が強くないと軽く見ないことです。季節性のインフルエンザが原因になった死亡者でも、一万人を超す年があります。流行が拡大すればそれだけ被害も大きくなります。

 暖かい時期には患者が減るとは言っても、流行がどの程度続くのかも予想できません。長期戦を覚悟して、万全の対策を講じることが不可欠です。



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