2009年4月29日(水)「しんぶん赤旗」
主張
新型インフルエンザ
万全の対策でのぞむべきだ
メキシコやアメリカで感染が広がっていた豚インフルエンザについて、世界保健機関(WHO)が、人同士の感染が広がっている「フェーズ4」に達したと発表しました。これを受け、日本政府はこれらの地域での新型インフルエンザの発生を宣言し、水際対策の強化などを決めました。
新型インフルエンザの発生が宣言されたのは初めてです。懸念されていた鳥インフルエンザではなく豚インフルエンザから感染が広がったのが今回の特徴ですが、感染ルートやウイルスの分析を急ぐ一方、万全の対策でのぞむことが求められます。
冷静に感染防ぐ対策を
WHOが予定を繰り上げて緊急委員会を開き、感染がないかごくわずかと見られる「フェーズ3」から「フェーズ4」への引き上げを決めたのは、百人を超す死者が出ているメキシコだけでなく、アメリカ、カナダ、スペインなど各国で相次いで感染が確認されているからです。感染者にはメキシコへの旅行者が多く人から人へと感染したものと見られています。
メキシコ以外では死者が出ていないなど、感染ルートやウイルスの特性についてはまだわからないことがありますが、インフルエンザのウイルスは、毒性の弱いものが強いものに変わることもあります。WHOが感染拡大を踏まえ、「フェーズ4」を認定し、被害を緩和する措置に力を注ぐとしたのは当然です。
WHOの発表を受け、日本政府も対策本部を設置し、今年二月決めた「行動計画」や「指針」にもとづいてウイルスの侵入を水際で防止する、検疫対策の強化などを決めました。国内での感染が確認されていない現段階では、検疫など水際対策を万全にすることが最も重要です。国民が適切な対応を取れるよう、正確な情報提供も求められます。
同時に、各国に感染者が広がっていることから、国内でも感染者が出ない保証はありません。感染防止のため地域の保健・医療体制を整備するとともに、手洗いやマスク、うがいの励行など日常生活でのインフルエンザの感染を防ぐ努力を強めることが重要です。
政府の「行動計画」では、国内で感染が確認され、新型インフルエンザが発生した場合には、拡大を防止するために感染者の指定医療機関への入院措置や学校の臨時休業、不要不急の集会等の自粛要請、事業者に対する不要不急業務の縮小要請などの措置がとられることになっています。重要なことは感染の拡大を防ぎ、被害を最小限に抑え込むことです。十分な警戒を怠らないことが大切です。
拡大を許さない備え
毒性が強い鳥インフルエンザについて政府がおこなった予測では、世界的な大流行(パンデミック)が起きた場合には、日本国内だけでも三千二百万人が発病し、最大で六十四万人が死亡するといわれています。今回の豚インフルエンザのウイルスの毒性はそれよりは弱いとの見方もありますが、万一大流行すれば大きな被害をもたらす恐れは十分あります。
インフルエンザのウイルスは目に見えるわけでも、感染してもすぐに発病するわけでもありません。予防のワクチンもこれから準備する段階です。念には念を入れて備えることが欠かせません。