2009年4月26日(日)「しんぶん赤旗」

主張

育児介護休業法改正

誰もが取れる制度と社会へ


 雇用悪化の下で、「育児休業をとったら解雇された」“育休切り”が急増しています。

 全国の雇用均等室に寄せられた育休や妊娠・出産による解雇などの相談は昨年度、約三千件(二月まで)に上ります。

 企業の無法を許さず、安心して取れる育児休業制度への改善が急がれます。

改善の一歩だが

 今国会に提出された育児介護休業法改正案には、三歳までの子を持つ労働者対象の短時間勤務制度や残業免除制度、父親の育児休業の取得促進策などが盛り込まれました。介護のための短期休暇制度も新設されます。仕事と家庭の両立にむけて改善の一歩です。

 一九九一年の育児休業法制定以降、制度は着実に前進してきました。しかし問題は、育休を取って働き続けられる女性が依然として非常に少ないことです。七割が一人目の出産で離職しています。制度の充実とともに、なぜ使えないのか、その問題に踏み込んだ抜本的な改善が求められています。

 一つは、育休を理由とした解雇や不利益取り扱いを絶対に許さないことです。改正案では初めて、法違反をして厚労大臣の勧告にも従わない企業に対する企業名公表制度が設けられます。改善ではありますが、より実効性のある罰則を検討する必要があります。

 企業への指導や紛争解決を支援する雇用均等室の体制強化も不可欠です。現状では均等室は都道府県に一カ所しかなく、多くは四、五人です。しかも、政府は均等室を含む都道府県労働局を全国八カ所に減らすことさえ検討しています。法の実効性を掘り崩す統廃合をやめ、体制を拡充して企業への指導監督を強化すべきです。

 もう一つは制度の対象にならずに置き去りにされている労働者の問題です。急増しているパートや派遣社員など有期雇用労働者は、一年以上雇用され、子が二歳まで雇用継続の見込みがあるなど育休の利用に厳しい条件が求められ、今回の改正でも改善されていません。自治体の非常勤職員も、その多くが育休どころか産休さえ取れない無権利状態にあります。

 働き方を問わず、六カ月以上の勤続で取れるようにするなど抜本見直しが急務です。

 このほか、休業中の所得保障(現在五割)の改善や中小企業への支援など、改善・充実が求められる課題が残されています。

 さらに、日本社会のなかで必要なのは、子育てと両立しながら働くことへの社会全体の理解と条件整備です。長時間労働の常態化や“子育ては女性”という意識は男性の育休制度の利用を困難にしています。雇用状況がとりわけ厳しいなかで、出産した女性や子育て中の労働者が当然の権利を行使することを、職場や社会全体で支えていくことは、社会の将来にとっても極めて大切なことです。

男女が利用できるよう

 三十年前に採択された国連女性差別撤廃条約は、男女平等の実現へ、子育てを社会全体と男女がともに担うことを宣言し、そのための条件整備、意識や慣習を変えることを含むあらゆる努力を政府に義務付けています。世界の流れから日本は大きく遅れています。

 雇用の安定と人間らしい働き方、保育の拡充とあわせて、誰もが安心して利用できる育児休業制度へ、実効ある改正が急務です。



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