2009年4月25日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「海賊対処」新法案

憲法破壊の新たな策動許さず


 自民・公明両党は、アフリカのソマリア沖に派遣している自衛艦に、外国船舶の警護と積極的な武器使用を認める「海賊対処」派兵新法案を、日本共産党などの反対を押し切って衆院で可決し、参議院に送付しました。

 法案は期限をつけたイラク派兵特措法などと違い、廃止されない限り続く恒久法です。数の力で法案を可決した自民・公明両党の責任は重大です。憲法破壊の新たな策動を許さず、廃案に追い込むため力を尽くすことが重要です。

武力行使への道を開く

 「海賊対処」であっても自衛隊の派兵は憲法上許されません。

 ソマリア沖は、武力紛争の悪循環が始まっています。最近もフランス海軍が「海賊」を二人、アメリカ海軍が三人を射殺し、「海賊」が「報復」を宣言して米国貨物船を攻撃する事態になっています。

 自衛隊がソマリア沖で活動を広げれば、武力紛争の悪循環にまきこまれるのは必至です。戦前の他国民犠牲の反省の上にたって戦争を放棄する憲法九条をもつ日本が、他国民を殺傷する道を進むことは絶対に許されません。

 しかも法案は、「海賊対処」という任務遂行を口実に、世界中どこにでも自衛隊を派遣できるようにし、武器使用を拡大しています。他国の船舶を「強取」するなどの目的で、「著しく接近」「つきまとい」「進行を妨げる」というだけで、「海賊」への発砲を認めるというのです。攻撃を受ければ「正当防衛」として武器を使うという従来の基準とは別物です。

 武器使用基準の拡大は、米軍などが行っている銃撃戦や「海賊」の殺害、船の撃沈を可能にします。いったん任務遂行のための武器使用を許せば、本格的な武力の行使に道を開くことになります。法案は明らかに違憲立法です。

 「海賊」情報収集のための対潜哨戒機P3C部隊の派遣も重大です。政府はP3Cや自衛艦が収集した情報を米軍に提供するといっています。それは「海賊」対策だけでなく、対テロ活動やソマリア本土への作戦を一体的に進める米軍海洋作戦への支援になるのは明らかです。法案にもない活動に道を開いていくおそれがあり、許されることではありません。

 もともと自衛隊は戦力不保持を明記した憲法に違反しています。この憲法の制約を無視できないため政府は、「わが国を防衛するための必要最小限度の実力組織であるから憲法に違反するものではない」(一九八〇年政府答弁書)との見解をくりかえしてきました。世界の果てにまで自衛隊を派遣する法案が、こうした政府見解にも反するのは明白です。

審議尽くして廃案に

 こうした憲法違反の内容は、国会の事前承認という「修正」でも変わりません。違憲立法を強行した自民・公明両党はもちろん、「修正」を持ち出し、法案の早期採決に道を開いた民主党の責任も問われます。

 参議院は自衛隊創設当時、憲法にそって「海外出動は、これを行わない」との決議をあげています(五四年六月二日、本会議)。新たな海外派兵法案がこの参議院決議にも反するのは明らかです。

 参議院は審議をつくし、廃案をめざすべきです。それが二年前の参議院選挙で与野党の議席数を逆転させた国民に対する責務です。



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