2009年4月20日(月)「しんぶん赤旗」
注文住宅メーカー アーバンエステート破産
500人 住宅未完成
倒産前日 1150万円振り込む
「(社長の)私はダミー、経営と資産管理は会長が行い、実印も会長が常時保管している」「帳簿がずさんだから金融機関はお金を貸してくれない」。倒産に際して社長がこんな説明を行った会社があります。被害者、債権者は怒り心頭です。(豊田栄光)
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この会社は注文住宅メーカーのアーバンエステート(埼玉県川口市、大山伸吾社長、従業員約四百八十人、資本金七千万円)。五十億円以上の負債を抱えて、三月二十四日に民事再生法を申請し、これが却下されると、今月三日に破産しました。
マイホームの引き渡しを受けていない施主はおよそ五百人。工事代金未払いの下請け業者も五百人以上になるとみられています。
アーバンエステートは二〇〇二年に設立され、テレビCMを利用した宣伝で知名度を上げ、首都圏を中心に伸張し、〇七年十二月期には約六十五億円の売り上げがありました。
会長が実質支配
元社員は「すべて永井昭四郎会長の判断にゆだねられていた」と証言します。永井氏は代表権のない会長ですが、実質的には会社を支配していました。
三月十三日、工事代金の支払いを求めた下請け業者に対して、大山社長は小切手を渡せないと述べ、その理由を「印鑑は会長が保管し、いま会長がどこにいるか不明だ」と説明しました。
会社側の説明では、倒産時に残っていた現金は四千万円。本社ビルも賃貸で、このままでは施主や債権者への配当は困難です。
神奈川県在住の施主Aさんは「四千万円しか現金が残っていないとは信じられない。私は二千二百万円支払っている。ほかにも多くの施主が数百万円、数千万円を払っている。永井会長が持ち逃げしたのではないか」と怒ります。
5億円払い込み
施主でつくる被害者の会が行った調査(四十七人)だけでも、昨年から今年三月にかけて払い込まれた工事代金の総額は五億二千万円です。今年だけでも三億四千万円を超えています。
千葉県在住の施主Bさんは三月十九日、アーバンエステートと住宅ローンの提携をしている都市銀行の口座をつくらされました。倒産前日の同二十三日、同銀行支店に呼び出されて、千百五十万円を振り込みました。
アーバンエステートの破産を申し立てた鈴木一弁護士は、「民事再生法申請は三月十日の取締役会で決定した」と話しています。
Bさんは「入金時にはアーバンエステートの社員も銀行行員も立ち会っていました。二人とも倒産の危険を知っていたのでは。夢をみせられ、だまされた感じ。銀行には不信感を持っています」と語りました。
設計ずさん元社員証言
会社はつねに資金難で、着工数を上げろ、着工前に入金させろとよくいっていました。
しかし、設計図は驚くほどずさんで、そのまま造れば、階段を上ると、はり(横木)に頭があたるものまでありました。
私が建てた物件の三分の一は、設計段階から構造に問題があり、そのままでは完成できない家でした。
会社幹部は責任回避ばかりで、何かあると現場に責任をなすりつけてばかりでした。社員の離職率は高く、入社一日で辞めた人もいました。