2009年4月18日(土)「しんぶん赤旗」
主張
3度目の「学テ」
学力荒らす愚行をやめよ
全国いっせい学力テストが二十一日に実施されます。今年で三度目です。
その日、小学校六年生の児童と中学校三年生の生徒は一日中、算数・数学、国語のテスト漬けです。それだけではありません。朝何時におきているか、食事はとっているか、本はどれくらい読んでいるか。プライバシーにかかわる問題にも答えなければなりません。
点数競争にかりたてる
なぜ全国学力テストをおこなうのか。子どもの学力の調査のためという、文科省の説明は完全に破たんしています。担当官自身が「学力の状況の全国的な傾向の把握のためなら、全員対象の調査でなくてもいい」とのべました。
いま同省がしがみついている唯一の「理由」は、「各教育委員会や学校が子どもへの学習指導を具体的に改善するのに役立つ」というものです。
しかし、テストの結果は数カ月先です。「どのようなテストだったか」、忘れたころに返されます。しかもどこでどう間違えたかわかる答案用紙ではなく、「できたかできなかったのかの○×」と全国平均正答率がかかれた個人表です。これで、どんな具体的改善が図れるというのでしょうか。
全国テストの本当の狙いは、学校を点数競争にかりたてることです。
文科省は「競争を助長しない」といいますが、実際には都道府県の平均点を発表し、「順位をあげろ」という競争のタネをまきました。市町村レベルや学校ごとの結果公表はさせないとしましたが、守られる保証がありません。大阪府や秋田県などで市町村ごとの公表が進み、鳥取県のある市では学校ごとの開示まで決めています。
学校長が教育委員会によびつけられ、点数をみせられ、点数が低いことをなじられる。校長は教師を呼びつけ怒る。子どもたちには「予備テスト」や「事前テスト」などのテストが繰り返しおこなわれる。さらには点数を上げるための不正がひろがり、不正をさす「田植え」や「ドーピング」という“学テ用語”までうまれました。
都道府県・政令指定都市教育委員会の29%が「抽出調査にかえる」などの見直しを表明しています(「朝日」五日付)。国に近い立場の教育委員会として、異例なことです。
私たちが憂えるのは、「学力は点数で測るもの」という短絡した考えがはびこることです。
日本教育学会会長などを歴任された大田尭さんは「学力は人間の内面の問題。安易に点数をつけたり、順番をつけるのはおかしい。数量化は参考資料の一つ。学力というのは生存力なのだと、徹底して考えるべきだ」とのべました。
国がすべきは条件整備
全国いっせい学力テストは、日本の子どもの真の意味での学力と未来を傷つけていることを、私たちは知るべきです。
学校の現場では、教員は授業準備もできない「多忙化」に苦しんでいます。また、学力の底上げや創造的な授業のための少人数学級の実施が切望されています。
国の仕事は、数十億円もかけて望まれない、役に立たない事業をすることではなく、日本の将来をみすえて教育条件を整備することです。全国いっせい学力テストの中止をつよく求めます。
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